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停滞と決壊。なぜアーセナルは負けたのか? 痛手だった修正力のなさ【欧州CL分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

後手を踏んだアルテタ采配



 RCランスは特に後半になると、自分たちの右サイドからアーセナルの守備を崩すことに成功していた。

 ホームチームの狙いは先述した通りだ。ラインを高く保つことで陣形をかなりコンパクトにし、アーセナルのパスミスを誘う。ボールを引っかけてからは、守備時は最終ラインに吸収されることが多いWBも一気に前に出てカウンターを狙った。

 この狙いを助ける形となったのが、アーセナルの左サイドの守備だ。左SBのオレクサンドル・ジンチェンコは偽SBの役割をこなすことでボランチの位置まで絞るため、左CBのガブリエウ・マガリャンイスが一人で広大なスペースを守ることになる。そのためブラジル代表DFからのビルドアップが引っかかれば、カウンターから一気にピンチを招くことになる。それが失点直前の64分のシーンだ。

 またジンチェンコも自らの裏への対応をかなり苦手としている。RCランスの狙いとアーセナルの弱点が嚙み合った影響で、後手を踏み続けたアウェイチームの左サイドが69分に決壊する。フロリアン・ソトカとプジェミスワフ・フランコフスキがワンツーで同サイドを抜け出すと、最後はポーランド代表MFのクロスにエリー・ワヒがダイレクトボレーで合わせてホームチームが前に出た。

 アルテタ監督はこの失点直後にジンチェンコを下げて、ベン・ホワイトを投入。右SBで出場していた冨安健洋を左SBに移すことで守備の安定を図ったが、交代がワンテンポ遅く、後手を踏む采配だった。

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