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Jリーグ 1年前

「ヴィッセル神戸」を取り戻した180分。“らしさ”を思い出させた2つの宝刀とは【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「犠牲心を持ってプレーできている」

横浜F・マリノスに勝利したヴィッセル神戸
【写真:Getty Images】



「彼(飯野)もサイドバックの気持ち、というものがわかると思うので、コミュニケーションを取らなくてもいいところも多々あったので楽だった部分もあったし、攻撃では思う存分に彼のスピードを生かしてあげようと思っていた。出ていく力をより余らせてあげることが、僕の今日の仕事かなと思っていたなかで、なるべく下げさせないように意識していましたけど、前半から本当に前への推進力を出してくれていたので相手にとって脅威になったというか、面倒くさい存在だったのかなと思います」

 酒井によればハイラインでマリノスを押し込んだ上で、攻撃の狙いをファーサイドに置く共通理解もあったという。ファーを狙ったクロスを味方が中へ折り返す前提のもとで、特に右サイドの仕事を「2人で崩すというよりは、とにかくクロスを上げて終わるプレーを意識した」とも明かした。

 先制点となった23分のFW大迫勇也のPKをさかのぼっていけば、右サイドから酒井が放ったクロスをファーサイドで大迫が折り返し、ボレーを放った武藤とDFエドゥアルドが交錯したプレーに行き着く。VARの介入から主審のOFRをへて、エドゥアルドのファウルが認められた。

 43分に右コーナーキックを頭で押し込み、貴重な追加点をあげた武藤も声を弾ませる。主戦場の右ウイングが左に変わっても「僕はどこでもできるので」とウェルカムを強調した。

「飯野が久しぶりに先発して僕自身も嬉しく思いますし、あれだけエネルギッシュに戦っている姿を見ると僕も負けていられないと思いました。チーム全員がチームのために走った結果が、今日のこの結果につながったんじゃないかなと思います。僕自身はチームが勝つためならどこでも、例えばセンターバックで出てくれと言われても100%を出すつもりですし、とにかくチームがこういう位置にいられるのは、間違いなくみんなが犠牲心を持ってプレーできていることが大きいと思っています」

 両チームのスタッツを比べれば、総走行距離は神戸が118.562kmでマリノスの114.962kmを、スプリント回数は神戸が157でマリノスの105をそれぞれ圧倒した。トラッキングデータがすべてではないが、それでも神戸がハードワークで相手を凌駕し、前線からの守備を体現し続けた跡が伝わってくる。

 そして、マリノスを圧倒した愚直さやがむしゃらさこそが、飯野のアグレッシブなプレーを介して吉田監督が期待を込めた相乗効果となる。新戦力の元スペイン代表MFフアン・マタを、2戦連続で投入する必要もなかった“らしさ”満開の快勝を受けて、指揮官はさらにこんな言葉を残している。

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