アーセナルの攻撃を活かす勇気ある選択
ラヤのボールを持った時の“落ち着き”にも注目したい。足元の技術に自信があるラヤは相手選手からプレッシャーを受けても、安易にロングボールや横パスを選択しない。相手がプレスに来ない時は、勇気をもって「自分でボールを持ち続ける」という選択肢をしっかりと選べる選手だ。ラヤは足裏でボールをコントロールしながら、適切なパスの機会を伺う動きを何度も見せていた。
前半5分のシーンはその顕著な例だ。ホワイトが高い位置に上がり、サリバとマガリャンイスがワイドに広がった状態で、2人の間にいたラヤには相手選手のプレッシャーがかかっていなかった。じっくりとボールを持ち、味方選手の位置を把握すると、ミドルサードで完全にフリーとなっていたジンチェンコに楔のパスを入れる。ボーンマスの前線と中盤はアーセナルの最終ラインに釘付けになっており、ジンチェンコはそのまま一気に前線へボールを持ち運ぶことができた。
このシーンでは最終的に得点には至らなかったものの、アーセナルの選手7人が相手ゴール前へなだれ込む”疑似”カウンターには非常に迫力があった。ラヤが安易にロングボールや無意味な横パスを選択せず、自信をもってボールを持ち続け、縦への突破口を切り開いたことで生まれたチャンスだと言える。
ハイレベルな正GK争いを繰り広げるラヤとラムズデールだが、この試合を見ると、やはりラヤが正GK争いを1歩リードしていると思わざるを得ない。次節は大一番となる昨季王者マンチェスター・シティ戦。ラヤとラムズデール、アルテタ監督が選ぶGKはどちらだろうか。シティとアーセナル、どちらのチームも負傷や出場停止によりベストメンバーを組むことは難しそうだが、この“総力戦”を制したチームが優勝へ大きく前進するのは間違いない。
(文:竹内快)