泥臭さと熱さ、賢明さと勇敢さ
「こういう試合で勝ちたかったな、と。初先発でこういう試合が巡ってくるのも縁かなと思いましたし、こういう試合に勝ってこそ、自分が呼ばれた意味があると感じて試合に臨んでいたので」
ボランチの大先輩として、山根は柴崎へリスペクトの念を抱いてきたという。しかし、いざ試合が始まれば、余計な考えを思いめぐらせる展開ではなかったのだろう。試合後にはこう語っている。
「あまりマッチアップするシーンがなかったので。本当に素晴らしい選手ですし、映像で見てきた選手で、リスペクトの思いはもちろん大きいものがありましたけど」
松原が負傷退場した76分からは右サイドバックへ配置転換。83分に訪れた安西との1対1を制した山根は、総走行距離で渡辺の11.310kmに次ぐチーム2位の10.725kmをマーク。泥臭さと熱さ、試合中に立ち位置を変える賢明さ、何よりもここ一番でリスクを冒した勇敢さでマリノスを支えた。
リーグ戦では4試合ぶりとなる白星とともに、神戸との勝ち点1ポイント差を死守した。優勝争いが2チームに絞られた感も漂ってきたなかで、29日にはその神戸をホームの日産スタジアムに迎える。2連続5度目の優勝へ向けた大一番へ。山根は静かな口調で思いを言葉に変えた。
「こういう試合で勝ち点3を取れたのは自分にとっても、チームにとっても自信になったと思います」
松原の状態次第では、神戸戦では山根が右サイドバックで先発する形も考えられる。神戸、マリノスの選手たちが、異口同音にトーナメント戦でいう決勝戦にたとえる運命の直接対決へ。勝利だけが求められた鹿島との決戦で新境地を見せ、自信を膨らませた山根がキーマンになってくる。
(取材・文:藤江直人)
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