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Jリーグ 1年前

山根陸が見せる賢明さと勇敢さ。横浜F・マリノス逆転勝利は「あの30分が大きかった」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

臨機応変に変える作業



「難しい試合になるのは予測がついていた。なので、綺麗に勝とうとなんて思っていなかった」

 劣勢を強いられ、リードも奪われながら、状況を好転させるための策を山根と渡辺は思いめぐらせた。はじき出された答えは、ダブルボランチの立ち位置を臨機応変に変える作業だった。

 具体的には、あるときには2人で左右にスライドし、またあるときには縦関係にシフトする。鈴木と垣田の背中を介して消されていた最終ラインからのパスコースを、自分たちが変幻自在に動きながら再び開通させる。試行錯誤していた対策がようやく奏功したのが32分だった。

 守護神の一森純からDF角田涼太朗を介したボールを、DFエドゥアルドがボランチを飛ばして縦につける。ターゲットは鹿島のボランチ、佐野海舟を引き連れながらポジションを下げてきたトップ下のナム・テヒ。ボールを渡辺にはたいたテヒの存在に、鈴木と垣田の注意も向けられた瞬間だった。

 すかさずフリーのポジションを取った山根が、渡辺からパスを呼び込む。内側のレーンにポジションを取っていた松原、さらに大外に開いたマテウスと流れるようにパスがつながっていく。右角からペナルティーエリアへ侵入したマテウスの横パスはずれた。しかし、走りこんできたのは渡辺だった。

 同点ゴールが生まれたのは、マリノスが初めて“らしさ”を発揮した直後の34分だった。右コーナーキックをマテウス、渡辺、再びマテウスと短くつなぎ、鹿島の選手たちを動かしてからマテウスが絶妙のクロスをゴール前中央へ供給。飛び込んだロペスが左足をヒットさせてゴールへ流し込んだ。

「僕たちがボール受けないことには何も始まらない。なので、まずは受けるポジションをしっかり取ることと、あとはナベくんとの距離が離れすぎないことだけを意識しました」

 試合の流れを変えた、ダブルボランチによる即興の意識改革を説明した山根はさらにこう続けた。

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