「もっと賢くならなければいけない」

　意識統一されていたアテネのディフェンスに加え、三笘とマッチアップした右SBのパフォーマンスが素晴らしかったことにも触れておく必要がある。

　先制ゴールを決めた右SBジブリル・シディベは2018年のFIFAワールドカップでフランス代表の一員として優勝を経験している実力者だ。三笘の対応も完璧で、適度に間合いを空けながら味方が戻る時間を作り、最も危険な選択肢を切ることで三笘の良さを消していた。右サイドバックがシディベでなければ、三笘の単独突破から多くのチャンスが作れていた可能性はある。

　英メディア『BBC』によると、ブライトンのロベルト・デ・ゼルビ監督は「もっと賢くならなければいけない」と振り返り、「さらにアップグレードするためには、失点した状況を知る必要がある」とも述べている。

　最初の2失点はセットプレーからだが、遡ると自陣からのビルドアップの局面で奪われてカウンターを受けている。3失点目はルーズボールを拾った三笘が四方を囲まれながらドリブルで仕掛け、奪われてしまったところが起点になっている。不用意なボールロストがことごとくピンチにつながってしまった。

　グレアム・ポッター監督の下で礎を築き、デ・ゼルビ監督によって昇華されたスタイルは、どの相手でも通用しうる破壊力を持つまでになった。ただ、相手もそれを封じようと対策してくる。ここから先、ブライトンがさらに上を目指すためには、デ・ゼルビ監督の言う「賢さ」が必要になってくる。

（文：加藤健一）