際立ってしまった三笘薫の問題
ブライトンに対し、アテネはシンプルなマンツーマンディフェンスを敷いてきた。1トップのレヴィ・ガルシアが右CBヤン・ポール・ファン・ヘッケを見つつ、2列目の4人がダブルボランチと両SBを、両SBがWGのソリー・マーチと三笘をマンツーマンで見る形に。縦関係の2トップ、アンス・ファティとジョアン・ペドロはアンカーと両センターバックがマークを受け渡しながら監視していた。
パスカル・グロスが柔軟なポジショニングで相手を引き付け、ソリー・マーチはダイレクトパスでボールを動かすことで、ブライトンの右サイドが相手のマンツーマンディフェンスをかいくぐる場面はあった。右SBのジェイムズ・ミルナーやタリック・ランプティがフリーになる場面が多く、ブライトンはここが突破口になりつつあった。
ただ、右サイドが機能していたかというとそれほどでもなく、ボールを失う場面は多かった。両サイドに共通するのは味方同士の距離感が近いがゆえにマンツーマンディフェンスの餌食になったことだろう。
ブライトンのボールホルダーには相手のマークがいる。それをサポートしようとブライトンの選手が近寄ると、それは同時にアテネの選手も近づくことになる。数的同数だが、アテネはタイミングを見計らってバスケットボールのダブルチームのように2人でボールホルダーに襲い掛かってボールを奪いきってしまう。
ブライトンは唯一、左CBがフリーになっていた。ここから持ち運んで数的優位を作ってズレを生むというのはブライトンの常套手段だが、ルイス・ダンクが筋肉系の問題により欠場しており、代役のイゴール・ジュリオはこのタスクをうまく果たせなかった。これもブライトンの攻撃が停滞した一因だろう。
ロスト回数はマーチが最多で18回。パスカル・グロスが16回、三笘薫とペルビス・エストゥピニャンが14回ずつと、上位4位をブライトンが占めた。ボールタッチ数(三笘が35回、マーチが65回、グロスが94回、エストゥピニャンが67回)を加味すると、三笘のボールロストの多さが際立ってしまう。後半はボールを受ける機会が減少し、さらに消えている印象を強めることとなった。
距離感が近いことで即時奪回につなげられるという側面もあるが、この試合においてはデメリットの方が大きかった。相手の1トップの背後を狙う動きから何度もカウンターを受け、前半だけで見ればシュート本数は7対4でアテネが上回っている。