エドゥアルドと山根陸から見たCB喜田拓也
「話した内容は、ちょっとしたコミュニケーションであるとか、もっと一緒にやれば、もっともっとそこは合わせられるんじゃないかというもの。キー坊(喜田)はものすごくサッカーIQの高い選手だし、最後まで絶対にあきらめないハードワーカーでもある。ボランチ以外のポジションでも問題なくこなせる資質を持っているし、確かに高さの部分で失われるものがあったかもしれないけど、自分としては誰が試合に出ようと、仲間を100%信じてプレーするだけだとずっと考えていた」
札幌対策としてマスカット監督が特別に導入した戦術も、結果としてマリノスのクリーンシートを後押しした。1トップの背後からダブルシャドーが積極的に飛び出し、前線に厚みを持たせる札幌の攻撃に対して、ボランチの山根陸が相手ボール時になると決まって最終ラインに下がった。
「シャドーの2人が高い位置を取ってくると、センターバック2枚で相手の3人を見るのは難しい。そこでボランチがひとつ下がって、3対3にして数をそろえる。第1戦からそういう戦術でした」
下部組織から昇格して2年目のホープは、最終ラインに入る喜田をカバーするための戦術ではないと断りを入れた上で、不慣れな位置で喜田が放ち続けたリーダーシップに憧憬の眼差しを向ける。
「喜田くんをフォローするというか、一人のセンターバックとして今日は本当にチームを助けてくれた選手だったし、むしろ僕の方が助けられました。自分が最終ラインに入るときに統率してくれたし、一人降りてきた相手選手に対して、じゃあ誰が出るのかという部分もはっきりしていたし、そうした事象が起こる前に喜田くんとあらかじめコミュニケーション取れていたところも大きかったと思う」
準決勝の相手は浦和に決まった。準優勝した2018シーズン以来となる決勝進出をかけて、10月11日に日産スタジアムで第1戦が、同15日に埼玉スタジアムで第2戦が待っている。
もっとも、その前にリーグ戦も佳境を迎える。残りは8試合。今月29日には現時点で勝ち点2ポイント差をつけて首位に立つ神戸を、日産スタジアムに迎える天王山が待っている。
「逆転で(準決勝へ)行ける、というところでチームにいい風が吹いたんじゃないかと思う」
ヤマザキナビスコカップ時代の2001シーズンを最後に遠ざかっているリーグカップ制覇へ。そして、マリノスにとって19年ぶり、Jリーグ30年の歴史では延べ8チーム目となるリーグ戦の連覇へ。喜田が残した短くも重い言葉から、手負いのマリノスに生まれた新たな力が伝わってきた。
(取材・文:藤江直人)
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