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Jリーグ 1年前

「死ぬ気で守るから」窮地の横浜F・マリノスに宿った新たな力。CB喜田拓也を支えたもの【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「自信があった」重なる新旧指揮官の言葉



 しかし、キックオフは待ってくれない。誰をセンターバックでプレーさせたらいいのか。エドゥアルドのパートナーに喜田を指名するのに、マスカット監督はほとんど悩まなかった。3-0で快勝し、2戦合計5-3で準決勝進出を決めた試合後の公式会見。指揮官はこんな言葉を残している。

「ここ6週間から8週間は夏という過酷な期間だった。そのなかで怪我人も出て、本当にチャレンジングな期間にもなった。そして、今日もプランを急きょ変えなければいけなかった。それでも、私のなかでは喜田がセンターバックのポジションを務められるという自信があった」

 喜田のキャリアを振り返れば、センターバックでプレーした経験が皆無なわけではない。例えば2020年9月16日の清水エスパルス戦。開始わずか3分で畠中が負傷退場し、リザーブにもセンターバックがいない想定外の状況で、ボランチから最終ラインに配置転換されたのが喜田だった。

 当時のアンジェ・ポステコグルー監督(現トッテナム・ホットスパー監督)はこう語っている。

「彼は非常に経験豊富な選手で、すべてのポジションに順応してプレーできる。なので、彼がそのポジションでもできるという自信が私のなかにはあった」

 マスカット監督の言葉と、自信の二文字を介してダブって聞こえる。しかし、3年前の清水戦は3バックの中央、リベロでの起用だった。4バックのセンターバックとは事情が大きく変わってくる。

 しかし、覚悟を決めた喜田の脳裏に、体現したいと考えていた光景が広がってきた。リーグ戦でも今シーズン初の連敗を喫しているマリノスは、首位の座をヴィッセル神戸に明け渡していた。そして、札幌との準々決勝第1戦も落とした。タイトルを手にする上での正念場だと喜田は受け止めていた。

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