ドイツ代表と対峙する中で掴む感覚
「(板倉)滉君からの浮き球のシーンだったかな。僕のイメージとしてはファウルをもらえるくらい突っ込んでくるのかと思ったら、意外に慎重に来た。だから、もう少しうまくスペースを使いながら間を作れば、タメを作る時間を増やせると思った。そこで途中から背負う形を増やしたり、ボールを持って体を預けるような形に変えました」
上田は世界最高峰クラブのCBとの駆け引きの中で自分なりの収め方を徐々に体得していく。実際、試合が進むに連れて、ポジショニングは効果的になり、タメを作る回数も増えていった。そういった工夫を凝らせるようになったのも、フェイエノールトというUEFAチャンピオンズリーグ(CL)本戦出場クラブでの経験値が大なのだろう。
「ビッグクラブに移籍したことによって、ここ1カ月で自分のレベルが試合に出ない中でも成長できた実感があった」とも語気を強めていたが、10カ月前の上田はそういう発言ができる選手ではなかった。カタールW杯ではコスタリカ戦の前半45分間出ただけで、仕事らしい仕事が全くと言っていいほどできなかったからだ。
「カタールで世界基準が分かったというよりは、薫君とか(堂安)律のように5大リーグのトップトップでやっている選手は大舞台でも違いを出せる。コスタリカ戦で何もできなかった僕がドイツやスペインの試合に出ていたら、一体、何ができたのかという疑問もある。その差を埋めるためにも、自分のアップデートと日々、向き合っていくしかないと思います」
今年2月、セルクル・ブルージュでもがいていた上田は自身の経験不足を痛感していた。そこからクラブで得点数を重ね、1トップの座を勝ち取り、格上クラブへの挑戦権を得た。わずか半年で一段階スケールアップした男はメンタル・プレーの両面で変貌。ドイツ代表と対峙しても全く物怖じしなくなった。