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Jリーグ 1年前

「99.9%」井手口陽介だからこそできる要求。「不格好でも勝つ」アビスパ福岡の象徴【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

FC東京の“脅威”だったダイナモ


「前半はチームとしての狙いがすごくいい形ではまり、守備から攻撃、攻撃から守備へもすごく速く切り替えられた。そこはよかったですけど、後半はちょっと受けに回ってしまったのが反省点です」

 舞台となった敵地・味の素スタジアムに“異変”が起こったのはキックオフ直前。選手紹介時に井手口の名前が呼ばれた瞬間に、FC東京のサポーターからブーイングが起こったからだ。

 ゴール裏を発生源とするブーイングは、福岡の一員として初めて臨むFC東京戦へ気持ちを高めていた井手口の耳にも届いた。心当たりを問われた井手口は「ないです。なんもない」と首をひねり、さらに「脅威に思われていたからでしょうか」という問いには「わからないです」と苦笑した。

 もっとも、脅威という言葉は的を射ていたかもしれない。トラッキングデータが公表されるJ1リーグ戦において、先発復帰後の井手口の総走行距離はすべての試合でチーム最長をマーク。前述したようにFC東京戦でもチーム最長となり、1試合あたりの平均は11.378kmに達している。

 スプリント回数がひと桁にとどまったのも2試合だけ。記録的な猛暑が続いた夏場の消耗戦で無尽蔵のスタミナをフル稼働させ、まるで猟犬のように中盤で攻守両面においてボールに絡み続け、長谷部茂利監督が掲げる「不格好な戦いでも勝つ」を具現化させていた象徴が井手口だったからだ。

 井手口が先発に復帰してから3試合目となるセレッソ大阪との第19節から、福岡はクラブ史上で歴代2位となる5連勝をマーク。その間に喫した失点がわずか1で、さらに1点差とクリーンシートが4試合ずつという泥臭い戦いを演じ、一時は順位を7位にまで浮上させた。

 そのなかで連勝を3に伸ばした7月16日の湘南戦後に、井手口が復帰した効果を長谷部監督に聞いた。湘南戦ではなかなか主導権を握れない展開にも決して焦れず、後半終了間際にセットプレーを足がかりにDFドウグラス・グローリが千金の先制点をゲット。そのまま逃げ切っていた。

 指揮官は井手口に対して「評価は高いです」と明言。さらに「チーム全体で言えば、連勝しているのは彼のおかげでもあると思っています」と称賛した上で、さらにこう続けた。

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