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震えるほど恐ろしい。ライスがアーセナルにもたらす「プラス」と「マイナス」【分析コラム】

text by 竹内快 photo by Getty Images

アーセナルで浮き彫りになるライスの課題



 攻守ともにハイレベルなプレーを見せるライスだが、チームをさらなる高みに押し上げるためには改善が必要なプレーもある。それがビルドアップ時のポジショニングの悪さだ。これは今季開幕から4試合全てで見られる現象だが、センターバックがボールを持った時、ライスは最終ライン近くまで下りてきてボールを要求する。この動きこそ、今のライスに残る唯一にして最大のマイナスポイントだ。

 この試合でも、ライスの動きで何度か攻撃が行き詰ることがあった。

 68分のシーンはその顕著な例だろう。左CBガブリエウ・マガリャインスがボールを持った時、ライスは最終ラインまで下りてきて、右CBウィリアム・サリバと明らかにポジションがかぶっている。ライスが不用意に下りたことで、高い位置を取るアーセナルのインサイドハーフ(ウーデゴーとハフェルツ)と最終ラインの間に大きなスペースが生まれ、攻撃陣と守備陣が分断される事態となった。

 この分断を打破するために1トップのエンケティアが中盤まで下りてきたが、ミドルサードはエンケティア1人に対してユナイテッド5人という数的不利な状況となっており、根本的な解決には至らなかった。

 ライスの“悪癖”は、アーセナルの前線、そしてインサイドハーフが重心を後ろに下げざるをえなくなる悪循環をもたらす。アルテタはライスのタスクを整理して、ビルドアップ時にアンカーが相手FWとMFの間に留まり続ける必要性を説明すべきだろう。ライスが中盤の底にいることで、アーセナルのビルドアップがよりスムーズになる。

 アーセナルが王者マンチェスター・シティを破り、20年ぶりの優勝をつかみ取るには、チーム全体がコンスタントに「tremendous」なプレーをする必要がある。そのためにはライス自身が課題を乗り越えることが必須だ。課題を克服したライスは“完成度が高い”プレイヤーではなく、攻守にわたってチームを牽引する“完成された”プレイヤーになれるはずだ。

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