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Jリーグ 1年前

横浜F・マリノス、アルビレックス新潟…コンセプトを貫くのは不可能なのか【Jの十字架】

シリーズ:Jの十字架 text by 庄司悟

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明治安田生命J1リーグは、各チーム9試合を残すのみとなった。暑さが続く8月最後のゲームを、各チームはどのように戦ったのか。“異端のアナリスト”庄司悟氏は、これまでのデータと照らし合わせながら、夏場に相応しい戦い方を提示する。(文:庄司悟)



ゲームコンセプトを貫くのは不可能に近い?

図1:2023年J1第25節の十字架(縦軸=パス成功数×横軸=ボール支配率)
【図1:2023年J1第25節の十字架(縦軸=パス成功数×横軸=ボール支配率)】

 J1第23節では「非優等生領域」が軒並み勝利という珍現象が起こり、第24節では一転して「優等生領域」が巻き返しを果たしたのは、本連載で解説したとおりだ。さて、先週行われた第25節はどうだったのかと言えば、またしても「非優等生領域」が再躍動した節となった。

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 同節の十字架(図1、縦軸=パス成功数×横軸=ボール支配率)を見てもらえばわかるように、「優等生領域」の横浜F・マリノス、アルビレックス新潟は負け、逆に「非優等生領域」の鹿島アントラーズ、京都サンガF.C.、横浜FCは勝ち……。毎節ごとに「優等生領域」<「非優等生領域」と「優等生領域」>「非優等生領域」が入れ替わる状態が続いている。

図2:2023年J1、各節におけるパス成功数とスプリント数の推移(全チーム総数)
【図2:2023年J1、各節におけるパス成功数とスプリント数の推移(全チーム総数)】

 今回の本題はここから。まずはJ1第1節から第25節までのパス成功数とスプリント数の各節ごとの総数(全チーム)の変化を表した図2を見てもらいたい。節を追うごとにパス成功数とスプリント数ともに右肩下がりなのがわかる。実は近年のJ1はいずれも右肩下がりのまま最終節を迎えている。この右肩下がりは、ゲームコンセプトの修正・変更というよりも、気候(酷暑)による影響であることは明らかだろう。

 特に今年はAFCチャンピオンズリーグがヨーロッパに倣って秋春制に変わったことで、9月からグループステージが開幕するスケジュールとなった。現在上位を走る横浜FM、浦和レッズ(+川崎フロンターレ、ヴァンフォーレ甲府)は12月まで6試合(アウェー3試合)が加わることになる。また、10月には国内の選手がそれなりに選ばれるはずの日本代表の2試合もある。もはや上位のチームにとっては厳しすぎるスケジュール、不公平すぎるスケジュールが待ち受けているのだ。

 もはや、これだけの暑さで、スケジュールがAFCと噛み合っていないとなると、1年間を通してゲームコンセプトを貫くのは不可能に近いのではないか。であれば、先週も述べたように、夏場は夏場の勝ち方(シュート1本までのパス本数を極力少なくする)に特化すべきときが来たのかもしれない。

 そういった意味でも、アドバンテージのある(ACL不出場かつ、もともとが夏場向きのゲームコンセプト)名古屋グランパスの敗戦、ヴィッセル神戸の引き分けは痛すぎる勝ち点ロスと言えよう。

(文:庄司悟)

庄司悟(しょうじ・さとる)

1952年1月20日生まれ、東京都出身。1974年の西ドイツ・ワールドカップを現地で観戦し1975年に渡独。ケルン体育大学サッカー専門科を経て、ドイツのデータ配信会社『IMPIRE』(現『Sportec Solutions』。ブンデスリーガの公式データ、VARを担当)と提携し、ゴールラインテクノロジー、トラッキングシステム、GPSをもとに分析活動を開始。著書に『サッカーは「システム」では勝てない データがもたらす新戦略時代』(ベスト新書)、『現代フットボールの主旋律 ピッチ上のカオスを「一枚の絵」で表す』(カンゼン)。

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