「未月のために」ではなく「未月とともに」
「まだ自分たちは追いついたりして踏みとどまっているし、他チームの結果を見るとマリノスも名古屋も負けている。チャンスがまだ何回も何回も巡ってきていると思うし、それをこれから生かすも生かさないも自分たち次第だと思っている。だからこそ、降格するかもしれない、という(危機感を抱いた)昨シーズンと同じような気持ち、イメージでやっていかないと上にも食らいついていけないし、下にもすぐに抜かれてしまう。そこはより一体感を持ってやっていきたい」
試合後の会見で吉田孝行監督は、引き分けをポジティブに受け止めた上でこう語った。
「試合前からみんなで『未月のために』と言っていたし、未月の最後まであきらめない気持ちというか、そういったプレーを今日はチーム全員で出せたんじゃないかと思っています」
キャリア初の得点王獲得へ向けてランキングのトップを快走する大迫も、たとえ相手に戦い方を研究されたとしても、奪ったボールをシンプルに最前線の自分へ預けてほしいと覚悟をのぞかせた。大迫自身は齊藤の名前を出さない。それでも言葉の端々から、齊藤への思いが垣間見える。
「ゴールに向かう姿勢というのが相手にとって脅威になるし、一番嫌がると思うので。バランスを見ながらになるけど、前目の選手としては相手の嫌がること、嫌がることをやり続けるしかない」
身長166cm体重66kgの小さな体で齊藤が体現してきた、可能性がある限りは絶対にあきらめない姿勢と執念は届けられた。ただ、復活を目指す24歳を本当に後押しするのは「未月のために」ではなく、「未月とともに」と思わせる試合結果となる。残り9試合。真価が問われる神戸の正念場が続く。
(取材・文:藤江直人)
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