齊藤未月へ抱く思い
「未月はもっと苦しい思いをしている。僕たちもミスやいろいろなトラブルがあるけど、あいつのことを思えば絶対にそこでくじけられない。あいつの思いも背負って、残りのシーズンを戦っていきたい」
神戸の1点ビハインドのまま進んでいった試合は、87分を境に大きく動いた。
DF山川哲史のロングパスに反応したパトリッキが、木村と競り合いながらペナルティーエリア内へ侵入した直後に飛び出してきた野澤と交錯。そのまま試合が続行したなかで再びVARが介入し、中村太主審によるオン・フィールド・レビュー(OFR)の結果、野澤のファウルが認められた。
PKキッカーを担ったのはもちろん大迫。ゆっくりとした助走からボールの手前で急停止し、向かって右へ蹴ると見せかけながらゴールの左隅へ、技ありの緩やかな一撃を流し込む。背番号10を託されるエースの3試合連続、鹿島アントラーズ時代の2013シーズンに並ぶ、自己最多の19ゴール目で神戸が同点に追いついたのは92分。直後に13分台の後半アディショナルタイムが表示された。
しかし、100分に再びFC東京が勝ち越す。スローインのリターンを受けたMF飯野七聖が、松木にパスをわたしてしまう。すかさず松木はFWアダイウトンへワンタッチパス。左サイドを疾走したアダイウトンが最後は中へ切り込み、ゴール右隅へゴラッソを決めた。
冒頭で記した山口の同点が決まったのは3分あまり後。このときも大迫のオフサイドをめぐってVARが介入し、OFRの末にゴールが認められた。そのまま引き分けた一戦を、山口は「ミスをして先制を許して、頑張って追いついて、というのは自分たちのやりたいサッカーではない」と振り返った。
「特にここ数試合は先に点を取られるパターンが多い。それも防げるようなミスからなので、単純に集中力だけでは片づけられないところもある。そこはもう少しチームとして気を引き締めてやっていかないと、次の天皇杯も含めて連戦になってくるなかでちょっと厳しくなってくる。上も下も見るわけではなくて、まずは自分たちのやるべきことにフォーカスして、自分たちがどのようにして勝ってきたのか、ということをしっかり思い出さないと、これからはズルズルと落ちていく一方だと思う」