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明治安田生命J1リーグは24節を消化した。前節で“異端のアナリスト”庄司悟氏は「暑さにコンセプトを溶かされなかったチームと、暑さにコンセプトを溶かされたチームが浮き彫りになった」と述べたが、今節ではどのような傾向があったのか。日本の酷暑を乗り越えるためのヒントをデータから提示する。(文:庄司悟)
それでもコンセプトを貫く者たち
先週の本連載で取り上げた「本物の非優等生」の3チーム(ヴィッセル神戸、名古屋グランパス、アビスパ福岡)が、第24節では一転して1分2敗という期待外れの結果に終わった。持ち上げた途端に急降下していくパターンは往々にしてあるが、この現象はどのように捉えるべきだろうか。
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J1第1節から第24節までの平均値を表した十字架(縦軸=パス成功数×横軸=ボール支配率、図1)を見てもらえばわかるように、第24節はいわゆる「優等生」のサッカーを継続しているチームが6勝している(それゆえ川崎フロンターレの不振ぶりが余計に目立つ……)。この十字架は一見、「優等生」チームに火が点き、逆襲態勢のように見える。
ただ、「最後は『正義』が勝つ!!」と、額面通りに受け取るのはまだ早い。今度は第24節のみの数字を表した十字架(縦軸=得点率×横軸=シュート1本にかかった平均パス本数、図2)を見てほしい。横浜F・マリノスとアルビレックス新潟を除けば、シュート1本にかかった平均パス本数が少ない左側に勝利チームが集結しているのだ。
なかでも浦和レッズとセレッソ大阪は「優等生」であるにもかかわらず、効率良くシュートまで持っていっていることがわかる。つまり、これまでのエコな傾向は全体的には変わってはいない、ということだ。それだけに、「優等生の逆襲」とは一概には言えない。
数字で表すと、第24節の勝ち組のシュート1本にかかった平均パス本数は平均24.6本で、横浜FMと新潟を外せば平均19.4本だった。一方で負け組のシュート1本にかかった平均パス本数は平均34.2本である。勝ち組のシュート1本にかかった平均パス本数はやはり少ない。
「優等生」組が例年以上に活発に映った夏の移籍によって、シーズン当初のコンセプトを軌道修正した可能性も考えられなくはないが、酷暑を乗り切るためにはやはり「パス本数を少なくする」ことは避けられないのかもしれない。それくらい異常な暑さだということでもある。
と言いながら、それでも右側=自分たちのサッカーで勝利した「優等生」の横浜FMと新潟は、当初のコンセプトを貫徹している。この貫徹ぶりは褒められていい。
今後は、パス成功率、ボール支配率に加えて、シュート1本にかかった平均パス本数にも注目してJ1を追いかけてみたい。
(文:庄司悟)
庄司悟(しょうじ・さとる)
1952年1月20日生まれ、東京都出身。1974年の西ドイツ・ワールドカップを現地で観戦し1975年に渡独。ケルン体育大学サッカー専門科を経て、ドイツのデータ配信会社『IMPIRE』(現『Sportec Solutions』。ブンデスリーガの公式データ、VARを担当)と提携し、ゴールラインテクノロジー、トラッキングシステム、GPSをもとに分析活動を開始。著書に『サッカーは「システム」では勝てない データがもたらす新戦略時代』(ベスト新書)、『現代フットボールの主旋律 ピッチ上のカオスを「一枚の絵」で表す』(カンゼン)。
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