ラッシュフォードが消えた原因
センターフォワードの位置に入ったラッシュフォードは左ウイングを主戦場としているドリブラータイプの選手だ。ポストプレーが得意なタイプではないため、同選手に攻撃の起点になることを期待するより、驚異的なスピードと技術を生かしたラインブレイクを狙ってもらうのが理想的だ。
試合開始当初はラッシュフォードのスピードを生かしたチャンスが何度か見られた。13分、B・フェルナンデスのスルーパスを受けたラッシュフォードがサイドを駆け上がり、相手DF2人を引き付けた状態でオーバーラップしてきたアーロン・ワン=ビサカにパス。ワン=ビサカの鋭いグラウンダーのボールはゴールに結びつかなかったがラッシュフォードの良さが出ていたシーンだった。
しかし、それ以降ラッシュフォードが輝いたプレーはほとんどなかった。足元の技術に優れたGKオナナとDFリサンドロ・マルティネスを中心に後方からの安定したビルドアップを目指しているユナイテッドだったが、試合時間が進むにつれてロングボールを多用した縦に速いサッカーに変化していた。これがラッシュフォードが「消えてしまった」原因である。
先制点を献上してから、攻撃への意識、すなわち縦への意識がさらに高まることは当たり前だが、ラッシュフォードが1トップを務める布陣でロングボール戦術を取るのは得策ではない。この試合、同選手はほとんど相手選手と競り合おうとしなかった。ロングボールを味方に落とす役割を果たせなかったラッシュフォードにも問題があるが、本職ウイングの選手にポストプレーの質を求めるのは酷なことかもしれない。中途半端なロングボールを相手に奪われ、優れたタレントが揃うユナイテッドの攻撃が終わってしまったことは非常に勿体ない。
今夏アタランタ(イタリア)から加入したデンマーク代表FWラスムス・ホイルンドは身長191cmとロングボール戦術に適した長身センターフォワードだ。ホイルンドが1トップを務めればこの問題は解決されるかもしれないが、同選手は現在ケガでチームから離脱中で、当面は他の選手が1トップを務める必要がある。1トップをアントニー・マルシャルに任せるのも、ラッシュフォードを左ウイングで使うための1つの選択肢だろう。同選手はユナイテッド加入当初左ウイングで出場することが多かったものの、オーレ・グンナー・スールシャール監督時代から主にセンターフォワードとしてプレー。9番ポジションでの経験は十分だ。
この試合は負けてしまったが、シーズンは始まったばかりだ。昨季2連敗スタートからマンチェスター・シティ、アーセナルに次ぐ3位に躍進したことを忘れてはならない。次節、“夢の劇場”オールド・トラッフォードでノッティンガム・フォレストを圧倒するマンチェスター・ユナイテッドに期待したい。
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