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デメリットが多すぎたアーノルドの偽SB起用。リバプールを停滞させるメカニズム【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 松島亮太 photo by Getty Images

デメリットが上回るアーノルドの偽SBシステム


 リバプールで偽SBとして起用されたトレント・アレクサンダー・アーノルドは、攻撃時はボランチの位置に入ってCBからのボールを受けたり、リバプールがボールを左サイドで保持した時は中央に寄ってプレーしたりと、もはやSBとは言えないポジション取りをしている。守備でも左サイドまでボールを奪いにいく姿が見られ、かなり自由に動いているようだ。

 だが、そもそもの話としてアーノルドは守備的な強度が高いとは言い難い選手だ。また、前線でボールを持っても個の力でドリブル突破できるわけではなく、サイドで機能していた時のように連動して攻撃へ絡む場面がなかなか見られない。

 ポジショニングもあまり良いとは言えず、この試合でアンカーの位置に入ったマック・アリスターの動きと被ってしまうことも多かった。中盤で優位な形を作れず、かと言ってワイドに開いてサイドの低い位置から展開することもできず、リバプールの攻撃の幅を狭める選択となっているのではないだろうか。

 しかし、ロングパス能力にはやはり目を見張るものがある。VARチェックの末にオフサイド判定が下りゴール取り消しとなったが、中央でボールを受けたアーノルドがそのまま攻め上がり、スルーパスを通してサラーがゴールネットを揺らした28分のシーンは、ピッチ中央でプレーするアーノルドの良さが出たシーンとなった。ただ、攻撃時に目立ったシーンはこれくらいで、持ち味を発揮したとは言い難い。

 結局、サラーは76分に若手のドークと交代となり、リバプール加入以来6年連続で記録していた開幕戦ゴールを決められず不満を顔に出してピッチを後にした。偽SBシステムの影響でサラーはワイドな位置に張ることが多くなり、なかなかゴールに近い場所で勝負ができなくなっているのも、彼のフラストレーションの一端となっているのかもしれない。

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