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Jリーグ 1年前

4局面などない。「0局対2局の攻防」だった横浜F・マリノス対名古屋グランパス【Jの十字架】

シリーズ:Jの十字架 text by 庄司悟

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 明治安田生命J1リーグの優勝争いは、ヴィッセル神戸と名古屋グランパスが首位・横浜F・マリノスを追う構図となっている。首位攻防戦となった8日の名古屋対横浜FMの一戦を「0局対2局の攻防」と評す“異端のアナリスト”庄司悟氏が、4局面では説明できないJ1優勝戦線を解き明かす。(文:庄司悟)



名古屋グランパス対横浜F・マリノスの上位対決

図1:2023年J1第19節の十字架(縦軸=パス成功数×横軸=ボール支配率)
【図1:2023年J1第20節の十字架(縦軸=パス成功数×横軸=ボール支配率)】

【前回】名古屋グランパスの「2局」をアンチサッカーと片付けられない。局面の三つ巴状態【Jの十字架】

 先週の当欄では、J1は4局組、2局組、0局組の三つ巴状態にあると述べた。優勝争いをしている上位4チームをカテゴリー分けすれば、横浜F・マリノス=0局、ヴィッセル神戸=2局、名古屋グランパス=2局、浦和レッズ=0局(寄り)となる。J1第20節までの十字架(縦軸=得点率×横軸=ボール支配率、図1)を見てもらえば、2局と0局の特徴がはっきりする。

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 まず、首位を走る0局の横浜FMは得点率、ボール支配率ともに高い右上の領域に位置している。ボールを支配して得点をするという至極真っ当なサッカーをしていると言えよう。

 一方で、首位を追う2局の神戸と名古屋はいずれも、得点率は高いが、ボール支配率は低い左上の領域に位置している。特に神戸は横浜FMより得点率が高く、ボールを支配せずに得点をするという至極真っ当ではない(?)サッカーをしているのだ。まさに、ボール保持・非保持の局面に特化した、ボールを奪うと前線に展開する2局のサッカーを地で行っている。

 第20節の名古屋対横浜FM戦は、まさに2局と0局の特徴が正面からぶつかり合いだった。お互いの得点の内訳を辿ろう。名古屋1点目「横浜FM陣内でのスローインをインターセプト」→横浜FM1点目「GKからの一本のパス=正真正銘の0局」→横浜FM2点目「ゴール前のパス回しから2列目によるシュート」→名古屋2点目「敵陣で横浜FMのパスミスを誘いゴール」といった具合である。

 FIFAの技術部門のメンバーであるアーセン・ヴェンゲルがカタール・ワールドカップのテクニカルレポートでカテゴライズしたタイプに、4局、2局、0局を振り分ければ、以下のように当てはめることができるだろう。

図2:サッカーの4タイプ
【図2:サッカーの4タイプ】

①ボールを支配して勝つチーム→0局
②ボールを支配しているのに勝てないチーム→4局
③ボールを支配しないで勝つチーム→2局
④ボールを支配できずに勝てないチーム→4局(図2)

 言わずもがな、神戸と名古屋はタイプ③で、ボールを保持していないときでも試合を「コントロール」しており、ボールを保持したときに効率良く得点できている、というわけだ。もはや4局が介在する余地のないJ1優勝戦線の「0局対2局の攻防」を今後も追いかけていく。

(文:庄司悟)

庄司悟(しょうじ・さとる)

1952年1月20日生まれ、東京都出身。1974年の西ドイツ・ワールドカップを現地で観戦し1975年に渡独。ケルン体育大学サッカー専門科を経て、ドイツのデータ配信会社『IMPIRE』(現『Sportec Solutions』。ブンデスリーガの公式データ、VARを担当)と提携し、ゴールラインテクノロジー、トラッキングシステム、GPSをもとに分析活動を開始。著書に『サッカーは「システム」では勝てない データがもたらす新戦略時代』(ベスト新書)、『現代フットボールの主旋律 ピッチ上のカオスを「一枚の絵」で表す』(カンゼン)。

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