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明治安田生命J1リーグは、序盤戦で首位を走ったヴィッセル神戸に代わり、昨季王者の横浜F・マリノスが首位に躍り出た。ピッチ上のカオスを1枚の絵で表す“異端のアナリスト”庄司悟氏はサッカーにおける局面を再定義し、「2局」「0局」という見方を持ち込む。(文:庄司悟)
局面から見る3つの概念
J1第19節のみの結果を反映した十字架(縦軸=パス成功数×横軸=ボール支配率、図1)を見てもらえばわかるように、右上の「優等生領域」にいるチームは、首位の横浜F・マリノスを除けば全滅だった。また、「優等生領域」の常連だったアルビレックス新潟と横浜FCが「非優等生領域」に移動しているのがわかる。しかも、両チームともにホームの試合で、ボール支配率を最重要項目から外したとあって、何らかの変化を感じずにはいられない。
言い換えれば、4局のサッカーから2局のサッカーに変化しつつあるのかもしれない。前回の当欄で解説したボール保持・非保持の境目がない0局とは違い、2局はボール保持・非保持の境目をはっきりさせている。これは、ただ単にラインを下げてブロックを構築するいわゆる堅守速攻タイプとは異なる。FIFAワールドカップカタール2022で2局のサッカーを徹底し、ベスト4に進出したモロッコ代表の戦いぶりを見れば、アンチサッカーと片付けられないことがわかる。
J1の2局組の代表格が、「非優等生領域」の常連となったヴィッセル神戸、名古屋グランパス、アビスパ福岡の3チームだろう。ちなみにアンドレス・イニエスタの惜別試合となった今節の神戸は、2局の「切れ味」が皮肉にもイニエスタの存在によって少々削がれたように映った。一方で、今後の神戸は迷うことなく、2局に邁進できる、とも言える。
話を戻すと、従来の4局組に横浜FMなどの0局組が台頭し、さらに神戸などの2局が加わり、J1は今や三つ巴状態(図2)にあると言っていい。局面の違いを考察していけば、J1も新たな見方ができるはずだ。
(文:庄司悟)
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庄司悟(しょうじ・さとる)
1952年1月20日生まれ、東京都出身。1974年の西ドイツ・ワールドカップを現地で観戦し1975年に渡独。ケルン体育大学サッカー専門科を経て、ドイツのデータ配信会社『IMPIRE』(現『Sportec Solutions』。ブンデスリーガの公式データ、VARを担当)と提携し、ゴールラインテクノロジー、トラッキングシステム、GPSをもとに分析活動を開始。著書に『サッカーは「システム」では勝てない データがもたらす新戦略時代』(ベスト新書)、『現代フットボールの主旋律 ピッチ上のカオスを「一枚の絵」で表す』(カンゼン)。
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