ヴィッセル神戸が痛感した現実「勝てなくなっちゃう」
「前期の試合では大迫さんと競り合って、セカンドを拾われるシーンがすごく多かったので、今回は大迫さんにしっかりマンツーでついてやらせないことを強く意識しました。僕はつねに目を離さず、ボールが入る前に叩きに行く、入ってもしつこく行って下げさせるというのをかなり意識しました」と彼が語るように、絶対的エースに仕事をさせないように集中した。
こういった対策は今後、どこのチームも取ってくるはず。大迫は外に流れたり、佐々木と入れ替わりながら下がった位置から飛び出すなど工夫をしていたが、結局、流れの中からのゴールは奪えなかった。大迫に依存した攻撃だけではこの先、難しくなるということを神戸は改めて痛感したはずだ。
「J1も一巡して相手も必ず対策はしてくる。サコ(大迫)に蹴るサッカーは有効ではあると思うけど、使い分けができないとダメ。もっとつなげるシーンは沢山あったと思うし、そこをすり合わせて、ボールを大事にしていかないと、後半戦、全然勝てなくなっちゃうかなと思うから…」と山口も顔を曇らせた。
幸いにして、ラスト5分というところでCKからマテウス・トゥーレルの一撃が決まり、神戸は1-1のドローに持ち込んだ。イニエスタのラストマッチを黒星で終わらなかったことは朗報だった。が、名古屋グランパスに抜かれて暫定3位に後退したのも事実。つなぐところと蹴り出すところのメリハリをつける作業を今後、しっかりやっていかなければ、山口の言うように各チームに対策されて、勝ち点を削られてしまいかねない。イニエスタという名手が久しぶりに先発出場した一戦から見えたことは少なくなかった。
「(今季は)素晴らしい戦いをしていますが、後半戦、みなさんの支えが必要になります。自分も離れたところからではありますが、チームに力を送りたいと思っています」
イニエスタはセレモニーでこう発言したが、本当に重要なのはここからだ。彼が去った後、神戸はどう変化していくのか。多彩な攻撃バリエーションを構築できるのか。
残された面々の真価が問われる。
(取材・文:元川悦子)
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