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明治安田生命J1リーグは前半戦が終わり、24、25日には第18節が行われている。サンフレッチェ広島を撃破した横浜F・マリノスと名古屋グランパスを倒したFC東京には共通点がある。「ハードワーク」という現象の正体を、“異端のアナリスト”庄司悟氏が解き明かした。(文:庄司悟)
「4局面」では説明できない「ハードワーク」の正体
今回は折り返し初戦となる第18節を終えたJ1の十字架の項目を、縦軸=スプリント数×横軸=走行距離(図1)に変え、まずは順位との相関性をチェックする。縦軸=パス成功数×横軸=ボール支配率の十字架では「優等生領域」とされる右上に、17位の横浜FC、18位の湘南ベルマーレが位置していることからして、フィジカル系の数字は順位を決定する要因ではないことがわかる。
ただ、第18節で気になる試合が2つあった。サンフレッチェ広島対横浜F・マリノスとFC東京対名古屋グランパスの2試合である。両試合の勝者、横浜FMとFC東京に共通していたのは、第17節までのスプリント数と走行距離の平均値(1試合平均)を以下のように上回っていたことだ。
【横浜F・マリノス第18節のデータ】
スプリント数138本(第17節まで平均124本)
走行距離121.184キロ(第17節まで平均117.898キロ)
【FC東京第18節のデータ】
スプリント数156本(第17節まで133本)
走行距離116.800キロ(第17節まで平均113.195キロ)
いずれもアンジェ・ポステコグルーの下で働いていたコーチ(ケヴィン・マスカットとピーター・クラモフスキー)が監督だったのは奇遇であろうか? さて、この2試合の中継でしきりに連発されたワードは、「ハードワーク」「切り替えの速さ」「ハイテンポ・ハイライン・ハイプレス」であった。
が、筆者の見立ては異なる。2022年7月5日付の日本経済新聞(タイトル:サッカー日本代表、W杯8強へ「65%の壁」越えろ)でもコメントしたように、現代サッカーは、ボール保持・ネガティブトランジション・ボール非保持・ポジティブトランジションという「4局」の循環ではなく、ボール保持・非保持にかかわらず常にボールに対して能動的かつ組織的に動く「0局」の時代に入り始めている(図2)。「ハードワーク」「切り替えの速さ」「ハイテンポ・ハイライン・ハイプレス」という現象を、単なる汗かき仕事のように分類し、とらえる時代はもはや過ぎ去っているのだ。
プレミアリーグの監督まで上り詰めたポステコグルーを追うように、その子弟たちもまた現代サッカー=0局に向かっている、と表現すべきではないだろうか。
(文:庄司悟)
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庄司悟(しょうじ・さとる)
1952年1月20日生まれ、東京都出身。1974年の西ドイツ・ワールドカップを現地で観戦し1975年に渡独。ケルン体育大学サッカー専門科を経て、ドイツのデータ配信会社『IMPIRE』(現『Sportec Solutions』。ブンデスリーガの公式データ、VARを担当)と提携し、ゴールラインテクノロジー、トラッキングシステム、GPSをもとに分析活動を開始。著書に『サッカーは「システム」では勝てない データがもたらす新戦略時代』(ベスト新書)、『現代フットボールの主旋律 ピッチ上のカオスを「一枚の絵」で表す』(カンゼン)。
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