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Jリーグ 1年前

「こんなにも変わる」。FC東京が取り戻した根本的な部分。“初陣”で見えた復活への光【コラム】

シリーズ:コラム text by 小澤祐作 photo by Getty Images

アルベル政権下からの変化とは



 ボールを大事に持ちながら相手を押し込むサッカーを志向していたアルベル政権下とは違い、名古屋戦でのFC東京はそこまでポゼッションに固執しなかった。「もう少しGKから繋いでくるかと思いましたが、けっこうシンプルに蹴ることが多かった」と長谷川監督もイメージとのギャップを説明していた。

 シンプルなボールをキレキレだったD・オリヴェイラが収めてキープし、その間に俵積田晃太や渡邊凌磨、安部柊斗といった選手がどんどん追い越していく。そうして名古屋を押し込み、その状態で奪われても素早い切り替えからの即時奪回を徹底することで、高い位置での2次攻撃を続けていた。とくに後半、FC東京はほとんどの時間を敵陣で過ごしている。

「いつもの東京であればどこかで抜けるのですが、最後まで集中力を切らさずに戦っていたなと」と長谷川監督が話した通り、FC東京が素晴らしかったのは、終盤になっても足を止めず、上記したクオリティーを落とさなかったこと。疲労が見え始める74分には、クリアを拾った森下龍矢に対し3人がかりで素早くプレッシャーをかけ、ボールを奪ったところでファウルを誘発していた。総走行距離でも名古屋の111.085kmに対し116.79kmと大きな差をつけている(スタッツはJリーグ公式サイトを参照)。

 前線の選手がハイプレスをかければ、後ろの選手はしっかりと連動し、ハイラインを保ち続けた。エンリケ・トレヴィザン、森重真人の両センターバックが前向きの良い守備からカウンターに繋げる場面が何度かあり、71分には森重、トレヴィザンと立て続けにボールをカットしてフィニッシュに持ち込んでいる。アルベル政権下に比べ、攻守における“縦への意識”はかなり変わっていた。

「何本か繋ごうと思ってゴールキックからやってもあまりうまくいかなかった。それよりかは、前から来ている相手を裏返すことをした方がいい方に転んでいたので、試合中に試しながら、今日はこっちの方がいいかなと。ハッキリしたプレーをすることでシュートとかクリアのセカンドボールを拾えましたし、そうやって自分たちの良いところを出せたんじゃないかと思います」

 キャプテンの森重はそう振り返った。「ハッキリしたプレー」は、名古屋戦を象徴する言葉であると同時に、アルベル監督の下、ボール保持に意識を注ぎすぎたFC東京が忘れていたものとも言えるかもしれない。

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