山口智監督とシュツットガルト監督の共通点
山口監督が選手たちに伝えているのはあくまで原則で、直接的に答えを教えないという。「選択肢を増やしながら(選手に)判断させてプレーさせる」という指揮官のアプローチは「僕が言いすぎて(選手に)意識させすぎてしまっている」と一部の選手の混乱につながる可能性がある。
ただ、開幕節では鳥栖から5得点を奪って勝利している。序盤戦では相手の監督が口を揃えるように「想像以上に湘南の圧力が強かった」と話していた。これまでよりも細かくプレシーズンで落とし込んだ結果、序盤戦の湘南は判断に迷いがなく、相手の想像を上回るスピードでプレーを選択できていた。ただ、なかなか勝ちきれない試合が続く中で選手たちに迷いが生じたのかもしれない。ストップウォッチで測ることのできないわずかな判断の遅れが湘南の歯車を狂わせている。
ちょうど同じ日に、湘南の練習場としている馬入ふれあい公園サッカー場では、2023 COPA BELLMARE U-11 PILOT INTERNATIONAL TOURNAMENT(コパ・ベルマーレ)というU-11年代の大会が行われていた。
「サッカーにおいては子どもたちが自分で決断を下さないといけない。自分たちが判断する解決策を自分たちで見つける」
この大会のためにドイツから来日したシュツットガルトのティム・カーク監督はこの年代の選手たちにこう指導しているという。原理原則という土台の上に選手個人の判断があるというこの説明は、山口監督のものと重なる部分がある。
抽象的がゆえに伝わりづらい部分もあるが、山口監督は普遍的なものを湘南に植え付けようとしている。ただ、山田が言うように、さらにその1つ下の土台には「どれだけ全力で戦っているか」がある。湘南が培ってきた財産を大事にしながら、山口監督の求めるものを体現できるようになったとき、湘南は暗闇から抜け出し、1つの上のステージに進めるのかもしれない。
(取材:文:加藤健一)
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