Jリーグ 最新ニュース
勝つための正解は1つではないが、勝っているチームに共通点を見出すことは可能だ。『現代フットボールの主旋律 ピッチ上のカオスを「一枚の絵」で表す』の著者である“異端のアナリスト”庄司悟は、順位を含めた3つの変数を1つの十字架に落とし込むことで、J2戦線の今を読み解く。(文:庄司悟)
J2リーグ上位クラブに共通するもの
J2は第20節を終え、FC町田ゼルビアが独走態勢に入りつつある。まずは、いつものように、20節終了時点の十字架(縦軸=パス成功数×横軸=ボール支配率、図1)を見てもらいたい。町田は左下の「非優等生領域」に鎮座している。一方で町田を追う2位・大分トリニータ、3位・東京ヴェルディは「優等生領域」という構図だ。
【今シーズンのJリーグは「DAZN for docomo」で!
いつでもどこでも簡単視聴】
では、次に縦軸を失点率、横軸を被シュート数にした十字架(図2)はどうだろうか。図1では対極(左下と右上)に位置していた町田と東京Vが左上に同居している。そう、両チームともに、「シュートを打たさない、ゴールを割らせない」ことが徹底(町田は失点11=リーグ最少、東京Vは同12=同2位)されているということだ。
逆に、図1で「優等生領域」にいたモンテディオ山形、藤枝MYFC、ロアッソ熊本、徳島ヴォルティス、レノファ山口FCは、図2ではすべて右、かつほとんどが右下に散っている。いずれも2ケタ順位に低迷しているのは、「やるべきこと(ボール保持)」は落とし込まれつつも、「やってはいけないこと(失点)」は落とし込まれていない証明であろう。
もちろん、「やるべきこと」を落とし込むのは監督の仕事だ。一方で、「やってはいけないこと」を落とし込めるかどうかは、監督の哲学、もしくは資質に関わってくるものなのかもしれない。その点で、特に、教育者としての経験がある町田の黒田剛監督は、サッカー指導者しかやってきていない監督にはない「規律」へのこだわりが強いに違いない。
思えば、UEFAチャンピオンズリーグを制し、3冠を達成したマンチェスター・シティ、来季のCL出場を決めたニューカッスル・ユナイテッドはともにプレミアリーグ最少の33失点だった。さらに、FIFA U-20ワールドカップで優勝したウルグアイ代表は7試合中6試合がクリーンシートである。「やってはいけないこと」が徹底されている強みは、改めてフォーカスされてもいいはずだ。
(文:庄司悟)
庄司悟(しょうじ・さとる)
1952年1月20日生まれ、東京都出身。1974年の西ドイツ・ワールドカップを現地で観戦し1975年に渡独。ケルン体育大学サッカー専門科を経て、ドイツのデータ配信会社『IMPIRE』(現『Sportec Solutions』。ブンデスリーガの公式データ、VARを担当)と提携し、ゴールラインテクノロジー、トラッキングシステム、GPSをもとに分析活動を開始。著書に『サッカーは「システム」では勝てない データがもたらす新戦略時代』(ベスト新書)、『現代フットボールの主旋律 ピッチ上のカオスを「一枚の絵」で表す』(カンゼン)。
【関連記事】Jリーグはサッカー日本代表の逆を行く「そろそろ異変に気がつかないの?」【Jの十字架】
鹿島アントラーズの「潜り込む」勝ち方とは? 名古屋グランパスを追い込んだ策略【Jの十字架】
「パス1本で複数のアクション」横浜F・マリノスが行う難易度が高いミッションとは?