ウォーカーの加速装置と歩幅
「まず、ウォーカーの止め方がすごい。ステップの踏み方が独特で、加速装置を使って追い込んでいる。身体の軸が骨盤の上に載っていて、安定している。そして、相手に近づくにつれて小股になっている。大股から大股は難しいけど、小股から大股ならできる」
歩幅を小さくする理由は単純明快だ。身体の構造上、右足を大きく出したあとに、もう1度右足を大きく出すことはできない。だが、小さく出せば、もう1度同じ足を出すことは可能だ。「反復横跳びも大きく開くより、肩幅くらいのほうが速い」と聞けばイメージしやすいだろう。「肉体的なスピードもあるんですけど、ステップが細かくなるような歩幅でやっている」と、スピードが出せる理由を論理的にひも解いている。
もう1つ、「加速装置」というのもキーワードになる。スキーやバレーボールなどで耳にする「抜重」というテクニックを応用した考え方で、ウォーカーの守備対応は説明できるという。
「足が速いウォーカーとしては、縦に行かせたら勝てると思っている。逆を突かれるのは嫌なので、カットインのコースをふさいで、あえて縦に行かせようとしている」
当然、カットインのコースをふさがれた三笘は、縦へ仕掛けようとする。しかし、これはウォーカーが撒いた罠である。
「ウォーカーは行きたい方向と逆に踏み込むことで、反発を使って加速している。これがフェイント兼加速装置になっている。ネイマールや三笘はドリブルで使っているけど、守備で使っているのがウォーカー」
三笘は相手の姿勢や重心を見て逆をとったつもりが、ウォーカーの術中にはまっていた。「グーを出せば三笘はパーを出すから、あとでチョキに変えればいい」。ウォーカーは相手のパーを出させるためにグーを出し、後出しでチョキを出している。
最高峰のマッチアップは、最高峰の技と肉体の競争でもある。当然、相手もやられっぱなしというわけにはいかず、三笘対策を講じてくる。その結果、4月1日を最後に三笘はゴールから遠ざかっている。しかし、終盤戦の三笘もただやられていたわけではない。