「代表でもやれる」太鼓判を押した同僚
川村はその後もピッチ内を幅広く動いて攻守両面で貢献する。11分には中盤でマッチアップする脇坂泰斗に激しく体を寄せてボールを奪いに行き、31分には左サイドを深くえぐってマイナスのクロスを供給して、越道草太の決定機を演出する。その直後にも中盤で的確なパスを右サイドに流し、再び越道のシュートチャンスにつなげた。
要所要所でいい仕事をする背番号8の存在感はやはり絶大。「中盤の推進力や球際の部分、身体的な能力は本当にすごい。一緒に中盤をやっててすごく助けられている。そこを出せれば間違いなく代表でもやれるんじゃないかなと思います」とボランチでコンビを組む野津田岳人も絶賛するほどだった。
そんな川村だが、代表選出後の5月31日の浦和レッズ戦後「どうしても気負い過ぎているというか、最近、自分のプレーができなくなってしまっている」と顔を曇らせていた。2018年にトップ昇格後、2019~2021年にかけて愛媛FCにレンタルされ、2022年にようやく広島で飛躍のきっかけをつかんだ男にしてみれば、代表という日の当たる舞台に抜擢されれば、特別な感情を湧いてくるのも当然のこと。その影響が少し心配されていた。
だが、続く6月4日の京都サンガ戦で約50mを独走するドリブルで決勝弾を決めた。「あのゴールで吹っ切れた感じです」と本人も自信を取り戻して持って今回の川崎に挑んでいた。そんな前向きなマインドも前半の一挙手一投足につながっていたのかもしれない。
だが、イニシアティブを握っていた前半のうちにゴールを奪えなかったことが、後半に入って響いてくるとは、彼らも考えていなかっただろう。実際、川崎はじわじわとギアを上げてきた。前半27分に小林悠が負傷交代するアクシデントがあったものの、代わって入ったレアンドロ・ダミアンの動きが想像以上によく、前線を活性化させていたのだ。
後半11分の先制弾はそのエースFWがお膳立てする形だった。