ゴールを決めた直後「そのシーンが浮かんできた」
「何も考えてなかったです。ただ足を振って、入ってほしいと」
映像を改めて確認すると、宮市はシュートコースなどお構いなしと言わんばかりに力任せに右足を振っている。思い切りよく振り抜いてなければ、ゴールに届いてなかったかもしれない。結果的には力任せのシュートが奏功した。
土屋巧と戸嶋祥郎の2人に当たったシュートは、鋭い回転がかかりながらゴール右隅に向かっていた。宮市が右足を振りぬいてからゴールが決まるまで、2秒あるかないかの刹那が永遠に感じられた。
「時が止まったのかと。僕の力ではどうしようもないくらいの回転がかかっていたんですけど、皆さんのポジティブなエネルギーが乗っかってゴールに入ったのかなと思います。リハビリの期間が走馬灯のようにフラッシュバックしました」
昨年7月27日、約10年ぶりの招集となった日本代表としてプレーしたEAFF E-1サッカー選手権・韓国代表戦で、宮市は右膝前十字靭帯を断裂。手術から復帰までのリハビリで、宮市は何度も日産スタジアムを使ったという。
「観客のいない日産スタジアムの階段を何度も上り下りしていた。(今日はそのときと)景色が変わったけど、お客さんがいる中でゴールを決めることができて、そのシーンが浮かんできた」
339日ぶりの得点は、苦しんだマリノスを勝利に導くゴールとなった。試合後のフラッシュインタビューで感極まった宮市も、その後のミックスゾーンでは笑顔を絶やさなかった。
「これが僕たちの強さ。最後まで何があるかわからない。何かを起こせると心底信じている。みんなのその強さが出た試合」
宮市はチームが掴んだ勝利であることを強調したが、宮市自身が諦めなかったことこそがチームの強さを象徴している。
(取材・文:加藤健一)
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