「僕のサッカー人生はこのまま終わってしまう」
「(シュートの)感覚はけっこうよかったんですけど、入りませんでした。もっと上(のレベル)へ行くためにはああいったワンチャンスを決めて、チームを勝たせる選手にならなければいけない。あの場面では絶対に決めなければいけなかったし、もっともっと練習が必要だと思っています」
今シーズンの伊藤は湘南戦まで全16試合に出場し、プレー時間はチーム最多の1279分を数える。同じくチームで最多、リーグでは8位タイの7ゴールをマークし、アビスパ福岡との第8節では後半アディショナルタイムの2発を含めたハットトリックを達成。チームを逆転勝利に導いた。
対照的に開幕直前のJ1リーグ戦におけるスタッツは通算11試合に出場して、そのうち先発はわずか2度。プレー時間の合計は約3試合分に当たる271分にとどまり、ゴール数も0だった。
大阪市東住吉区で生まれ育ち、セレッソ大阪U-15から岡山県の強豪・作陽高をへて2016シーズンに浦和レッズへ加入。プロのキャリアをスタートさせた25歳の伊藤のなかで何が変わったのか。
答えは2021シーズンまでの伊藤が浦和からJ2の水戸ホーリーホック、J1の大分トリニータへ期限付き移籍を繰り返していたのに対して、昨シーズンからは新潟へ完全移籍した点にある。
ほとんど出場機会を得られなかった浦和と6年で決別。当時J2を戦っていた新潟へ新天地を求めたときの心境を、伊藤は「いままでとは違う、大きな覚悟を持ってここに来た」と振り返る。
「一人のサッカー選手として、もう若手と呼ばれる年齢ではなくなってきているなかで、J1での結果や実績がほしい、という強い思いがありました。当時の新潟はJ2でしたけど、ここで活躍できなければ僕のサッカー人生はこのまま終わってしまう、と。それぐらいの覚悟でここに来ました」
プロ入り当初から、伊藤はテクニックの高さが評価されてきた。それでも、国内で最高峰となるJ1の舞台でなかなか爪痕を残せない。何が自分に足りないのか。何が必要なのか。新潟への完全移籍を機に上手いだけでなく、上手くて怖い選手にならないと生き残れないと覚悟を決めた。