「不運だった」流れを変えるターニングポイント
だが、老獪なマリノスは後半に入って攻撃を活性化し、主導権を握り返す。そして62分には左サイドを攻略。永戸勝也からパスを受けたエドゥアルドがクロスを上げ、アンデルソン・ロペスが巧みに右足でゴール。2-2に追いつくことに成功したのだ。
それでも、この時点でのFC東京は十分に勝ち目があると思っていたはず。仲川自身もそうだっただろう。しかし、67分に予期せぬアクシデントが起きる。前半に負傷した小泉慶に代わって後半頭から出場していた松木玖生が、マルコス・ジュニオールの顔面に肘打ちしてしまい、長いオンフィールドレビューの結果、一発退場と判定されてしまったのだ。
これには本人も猛抗議したが、一度決まったジャッジが覆ることはない。「玖生もわざとやったわけでない。不運だったというしかない」と森重も話していたが、この退場劇が流れを大きく変えるターニングポイントになった。
11対10と数的優位になってからのマリノスは凄まじい推進力を前面に押し出した。それを加速させたのが、ラスト10分に登場した水沼と宮市亮の両ワイドだ。2人の投入から数分後にベンチに下がった仲川は厳しい表情で戦況を見守っていたが、89分に水沼のクロスからマルコス・ジュニオールに決勝点を決められ、古巣の底力をまざまざと見せつけられる格好となった。
「相手の圧力もありましたし、退場が全部を変えてしまったところもあった。最後の失点もその前でキープできるところで簡単に失ってやられている。10人になった時にボールをどう大切にするかがチームとして理解できていないところなのかなと思います。
それをみんなでもっと言い合わないといけない。優勝するためには要求していくことが大事。成熟度的にマリノスにまだまだ及ばないというのを僕自身、感じた。マリノスを越えていかないと優勝はないし、リスペクトしながらやっていかないといけないですね」
仲川は毅然と前を向いた。