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勝つ術を知るカゼミーロがマンUにもたらすもの。チェルシー撃破に導いた守備戦略【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 編集部 photo by Getty Images

試合の入り方と先制後の振る舞い



 マンUはアグレッシブに試合に入った。チェルシーのキックオフで試合が始まると、1トップのアントニー・マルシャルが先陣を切って相手GKまでプレッシャーをかけ、開始15秒ほどで、敵陣ペナルティエリア付近で最初のボール奪取に成功した。立ち上がりはこのように敵陣でのハイプレスを指向し、ボールを奪ったら素早くゴール方向に矢印を向けていた。

 すると6分、左サイドでFKを獲得し、クリスティアン・エリクセンの正確なクロスを中央でカゼミーロが頭で合わせて早々と先制に成功した。

 結果的にセットプレーから生まれたものではあったが、マンU先制点は立ち上がりのアグレッシブな姿勢がもたらしたものだった。テン・ハフ監督は立ち上がりから攻撃的な姿勢で入ることで相手に脅威を与え、あわよくばそのまま先制して試合の主導権を握ろうと試みたのだろう。

 ただ、前がかりになった守備の裏を突かれてチェルシーにカウンターのチャンスを与える危険なシーンもあった。10分以降は徐々に敵陣での圧力は弱めていき、自陣でのブロックからカウンターを狙う戦い方がメインになっていった。

 チェルシーには右寄りでプレーするカイ・ハヴァーツのポストプレーや、ノニ・マドゥエケのボールキープ、カーニー・チュクエメカのボールキャリーなどによって、右サイドから前進を許してしまうケースが多く、自陣でのプレーは長くなった。しかし、マンUのブロックは強固だった。ラインを必要以上に下げすぎず、中央を優先してしっかりとゴールへの進路閉め、ブロックの外の相手選手をマーカーがしっかりと捕まえて自由を与えなかった。

 こうして時間が経過していく中で、攻撃に移った際にはマンUらしいカウンターを中心に追加点のチャンスを作り続け、結果的に3得点を追加した。4-0になってから少し隙ができて1点は失ったものの、時間帯と場所によってメリハリをつけたテン・ハフ監督の守備構築は試合を通じて光っていた。本来のポゼッションを高めるスタイルには固執せず、まずは失点をしないことから考えたテン・ハフ監督のアプローチが勝利へとつながった。

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