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ダニエル・ポヤトス監督を招聘したガンバ大阪は最下位に沈んでいる。攻撃的なサッカーを標榜しているが、得点数は試合数を下回る13得点、失点数はリーグワースト2位の30失点に上る。データから浮かび上がる現実と構想のギャップを、“異端のアナリスト”庄司悟氏が解き明かす。(文:庄司悟)
5連敗で最下位の18位に沈むガンバ大阪は20日、クラブの公式HPで「ガンバ大阪に関わる全ての皆様へ」と題し、小野忠史社長の声明を発表した。元野球人らしく(?)、現状の課題を攻撃と守備に分け、要約すると、攻撃では「精度と決定力の改善」、守備では「状況判断の向上」を掲げている。内部機密をここまで詳細に公開していいのものかと首を傾げたくなるほど、G大阪の構想と現実のギャップを鮮明にしてみせた。
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今回は、G大阪の攻撃における目標である「ボール保持率の向上とシュート数の増加」に焦点を当て、その構想と現実のギャップを十字架でより鮮明にしよう。
まずは、当たり前のJ1第14節までの十字架(縦軸=パス成功数×横軸=ボール支配率、図1)を見てもらいたい。G大阪の立ち位置は、同社長が目指すサッカースタイルである右上の優等生領域にいる。では、次に縦軸をG大阪のシュート数(1試合平均13.8本)、横軸をG大阪のボール支配率(1試合平均55%)にし、第14節までの対戦相手を配置した図2を見ると――。
ボール支配率の平均値を超えた9試合中7試合が、シュート数の平均を下回っているという奇妙な現象が起きている。さらに、縦軸を被シュート数(1試合平均12本)にした図3を見てもらいたい。こちらも、ボール支配率の平均値を超えた9試合中7試合が、被シュート数の平均を上回っている。
つまり、ボール支配率が上がればシュートは増える、ボール支配率が下がればシュートは減る、といった単純明快な法則が成り立っていない。声明文のように構想と現実のギャップをダラダラと箇条書きする必要などなく、ボール支配率×シュート数一本だけで、G大阪の現状を語れてしまうわけだ。
最後に、縦軸を失点率、横軸を得点率にした「単純すぎる十字架」では、G大阪はもちろん、左下の非優等生領域に鎮座している。ノンプロ球界で鳴らした小野社長からすれば、縦軸は防御率、横軸は打率に置き換えられるはずで、であれば、「防御率を下げ、打率を上げれば良い」と考えるかもしれない。しかし、単純すぎる十字架だけでは、そこに隠された弱点は見つけることはできない。
(文:庄司悟)
庄司悟(しょうじ・さとる)
1952年1月20日生まれ、東京都出身。1974年の西ドイツ・ワールドカップを現地で観戦し1975年に渡独。ケルン体育大学サッカー専門科を経て、ドイツのデータ配信会社『IMPIRE』(現『Sportec Solutions』。ブンデスリーガの公式データ、VARを担当)と提携し、ゴールラインテクノロジー、トラッキングシステム、GPSをもとに分析活動を開始。著書に『サッカーは「システム」では勝てない データがもたらす新戦略時代』(ベスト新書)、『現代フットボールの主旋律 ピッチ上のカオスを「一枚の絵」で表す』(カンゼン)。
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