個人任せの不安定なビルドアップ
今シーズンを通してビルドアップには苦労してきたマンUだったが、この試合も同様だった。マンUのビルドアップは個人の即興性に委ねている部分が多く、その不安定さはボーンマス相手にも露呈していた。
この試合のマンUは、左SBのルーク・ショーが重心を下げ、両CBと共に3バック気味の陣形を作り、後方のビルドアップを進めることが多かった。そこに対してのサポートとして、主にエリクセンが出口を作って前進していく場面が多いのだが、そこから先は全体の連動性が乏しく、ゴールに向かってどうアプローチするかの共通認識を全体で持っていない。
エリクセンが顔を出す場所やタイミングというのは場面によって様々で、それ自体は個人でバリエーションを作っている。しかしその後に誰が2人目になり、連動して3人目が動いていくのかという先の段階のバリエーションは少ない。特にカゼミーロはサポートの動きや、その後の判断力が欠けておりビルドアップにおいての貢献度は低い。キープ力の高いウイングのアントニーやジェイドン・サンチョらに預けることによってある程度は前進できたが、決して効果的と呼べるビルドアップは多くなく、それに伴って決定機の数も限られた。
ボーンマスはそれほど敵陣深くまでハイプレスをかけて来なかったため、奪われてもそれほど大きなリスクはなく、失点等には至らなかった。しかし、上位陣とのアウェイゲームでほとんど勝てていないという今季の戦績からもホームでアグレッシブにハイプレスをかけてくる相手に対して、その打開に苦しんで敗れていることは明らかだ。
今季を通じて抱えるビルドアップの問題は、ダビド・デ・ヘアが正GKとしてふさわしいのかという議論や、中盤の構成などの様々な要素が絡み合っており非常に複雑だが、来季マンUが優勝争いに加わるためには、エリック・テン・ハフ監督がこの夏に必ず改善させなければならない重要課題となる。