裏目に出たアルテタ采配
一方、アーセナルのミケル・アルテタ監督はブライトンの4-4-2でのプレスに対して、対策を講じることができなかった。
ベストメンバーであれば、オレクサンドル・ジンチェンコが中盤に入り、後ろ3枚でビルドアップを行うのだが、この試合はキーラン・ティアニーの特性を生かすために左SBに偽サイドバックの役割を与えなかった。
SBを両サイドに張らせることで、相手のプレスはハマりやすくなってしまうのだが、そこを最後まで修正できずに、2失点目の場面では相手のプレスに引っかかって失点を喫してしまった。
また、アルテタ監督のゲームプランは先制点を奪えなかったことで裏目に出た。この試合のアーセナルの狙いとしては、ブライトンに多くボールを持たせることで、ビルドアップのミスの確率を上げて、ショートカウンターを狙うものだったが、フィニッシュの精度を欠いたことで先制点を奪えなかった。
逆に62%もボールを握られたことで、前線の選手たちの疲労のピークは通常の試合よりも早く訪れてしまい、先制点を失った場面ではブカヨ・サカが戻り切ることができなかったことが影響している。
結果としてアルテタ監督は後半にリース・ネルソンとトーマス・パーティ、エディ・エンケティア、エミール・スミス=ロウというフレッシュな面々をピッチに送り出すことで、プレス強度を維持することを試みたが、全体的に身体が重いのは変わらず。エンケティアとネルソンは雑な守備が目立つなど、指揮官の思惑通りとはいかなかった。
結果的には采配が全て思い通りにいったデ・ゼルビと、先制点を奪うことができなかったことでゲームプランが裏目に出たアルテタという構図に。この試合においては、両指揮官の修正力と経験値の差が、そのまま試合結果に直結したと言えるだろう。
(文:安洋一郎)