「学ばせてくれた部分でもある。いい勉強なりました」
今シーズンを振り返れば、FC東京はなかなか波に乗れなかった。直近の2試合は、アビスパ福岡と北海道コンサドーレ札幌にともに敵地で連敗。ゴールデンウイーク中の過密日程による疲労を考慮された長友が、今シーズンで初めてベンチ外となった後者では1-5の惨敗を喫していた。
「今日は何としても、何でもいいから勝ちたいと。そういう意気込みで試合に入りました」
キックオフに臨むまでの心境を明かした長友は、さらに川崎戦を前にしてチームメイトたちと共有した戦術面、そしてメンタル面での約束ごとを次のように説明している。
「すべてを繋ぐのではなくて、ロングボールや裏へのボールを織り交ぜながら戦おうと試合前から話していました。特に前半はそのバランスが非常に良かったんじゃないかなと思います。あとは本当にもう一度、球際や(攻守の)切り替えといったサッカーの基本ですよね。戦術の前にやるべきことを、みんなでもう一回意識して今日は入りました。そこを出せたんじゃないかなと思います」
試合は開始12分、左サイドバック徳元悠平のJ1初ゴールでFC東京が先制した。左サイドでこぼれ球を拾い、慌てて間合いを詰めてきたFW家長を右への切り返しでかわし、ペナルティーエリア内へ侵入した直後に右足を一閃。角度のない位置からファーサイドへ、強烈な一撃を突き刺した。
歓喜のシーンを巻き戻していくと、右サイドから長友が放ったクロスに行き着く。ファーサイドで山根視来と競り合ったMF安部柊斗の頭にうまく合わず、左サイドへこぼれていったのだ。
自らのクロスを問われた長友は「そうでしたっけ」と苦笑した。それよりも沖縄県糸満市で生まれ育ち、当時J3だったFC琉球でプロのキャリアをスタートさせ、J2のファジアーノ岡山を経て、今シーズンからFC東京に加入した27歳の苦労人の大仕事を喜び、そして刺激に変えた。
「あれはすごかったね。練習でもなかなか見たことのないレベルのシュートを決めていましたよね。長らくそこまでシュートを打っていない僕としても、その意識が欠けていましたよね。サッカーはそもそも点を取りに行かないといけない。サイドバックはディフェンダーだからとか、そういったイメージだけではなくて、サイドバックからでも点を取れると徳元が示してくれたし、僕に学ばせてくれた部分でもある。いい勉強なりましたし、ちょっと意識を変えてみます」