湘南ベルマーレのDF陣に足りないものとは?
ルーズボールを宮澤裕樹がつなぎ、右サイドから金子拓郎が仕掛ける。右足のクロスをゴール前に侵入した駒井善成が合わせてゴールネットを揺らした。試合開始からわずか6分でスコアが動いてしまった。勝利がない直近6試合すべてで先制点を献上している。
湘南は札幌に対して3-4-3の形で望んだが、相手のボランチが降りて4枚で回されると、数的優位を作られてプレスがハマらなくなった。すると、湘南のウイングバックの位置が低くなり、重心の低い5バックになってしまう。流れが良くないときの湘南の典型的なパターンだ。重心が低くなればFWとの距離感も悪くなる。間延びして中盤にスペースを与えてしまう悪循環に陥っていた。
「やっぱりコミュニケーションを取らないといけないと思う。ラインコントロールもそうだし、チャレンジ&カバーをもっと徹底して誰が行くか声をかけないといけない。結局うしろがコントロールしてくれないと前も動きづらい。もっと全員で声出さないと。自分も含めて、そういう声が少ない」
右ウイングバックの石原広教は自省しつつこう話す。サイドで最終ラインと前線をつなぐ役割だからこそ、距離感の良し悪しを敏感に感じ取っていた。
0-1でハーフタイムを迎えたが、仕切り直しと言わんばかりに湘南は後半開始から畳みかけた。「いつもと形が違ったので、前半できなかったことを(ハーフタイムで)修正した。前半から伝えていたんですけど、うまくいかなかったので強調して入った」と山口智監督が言うように、やりたいことを整理し直したことで、湘南は躍動感を取り戻した。
それが実り、ハンドから獲得したPKを町野修斗が沈めて同点に追いつく。さらに直後には湘南の選手がルーズボールに泥臭く身体を投げ出してつなぎ、最後は町野のパスをフリーで受けた阿部浩之がゴールを決めた。1つのパスに4人、5人がアクションを起こす、湘南らしさが見えた時間帯だった。