興梠慎三が明かす本音
右サイドからゴール前へ送られたクロスが、西川とDFアレクサンダー・ショルツが見合う形でファーサイドへ流れ、走り込んできたアル・ヒラルの選手にフリーで決められる。ミス絡みで開始13分に先制点を献上する嫌な流れを、53分のアウェイゴールで断ち切ったのが興梠だった。
自陣から発動させたカウンター。MF大久保智明が放った自身へのスルーパスを相手選手が何とかカットするも、コースを変えてゴールに向かっていくボールをアルマユーフも処理できない。そのまま左ポストを直撃し、はね返ってきたところを相手選手よりも早く反応して押し込んだ。
これまでACLに出場した日本人選手のなかでは最多で、大会全体を通しても歴代5位にランクされる興梠の通算27ゴール目で追いついた浦和は、そのまま1-1で引き分けた。
続く2ndレグをスコアレスドローで終えれば、アウェイゴールを奪っている浦和に軍配が上がる。興梠をして「少しホッとした、というのが一番大きい」と言わしめながら、それでも「守りには入らない」と誓って迎えた2ndレグは、スタッツ上では圧倒的に押し込まれた。
アジアサッカー連盟(AFC)の公式サイトに掲載されたデータによれば、浦和のボールポゼッション率は29.4%と、70.6%に達したアル・ヒラルの後塵を拝した。シュート数も6対10で上回られたなかで、浦和が放った枠内シュート数に至っては「ゼロ」となっていた。
ボールを保持する相手に対して、それでも興梠が先陣を切って前線から愚直にプレスをかけ続ける。枠内に放たれた相手の4本のシュートのうち、西川が21分、42分、90分とビッグセーブを連発してゴールを死守。スタンドの大声援に後押しされながらつかんだ勝利を興梠はこう表現した。
「不細工な試合でも、今回に関しては絶対に勝ちたかった、というのが正直な気持ちです」
連覇を狙ったアル・ヒラルを2戦合計2-1で振り切り、5大会ぶりにACLを制した浦和は、3度目を数えた優勝回数でもアル・ヒラルを抜いて現行制度の大会史上で最多となった。浦和に関わるすべての人々が一丸になって泥臭く、ひたむきに勝ち取ったタイトルの価値を西川はこう語る。
「決勝が初めての選手もいたし、若手の成功体験としても絶対に取りたかった。ここ(ACL)でやれる自信がつけば、間違いなく日本代表にも入っていける選手がたくさんいるので」