「浦和じゃなければありえない光景」
常に浦和を支え、力強く後押しするファン・サポーターへの感謝の思いも忘れていない。2ndレグでは町全体がチームを鼓舞し、チームバスが埼玉スタジアム入りする際には大勢のファン・サポーターが集結。フラッグを振りかざし、チャントを鳴り響かせながら共闘を誓った。
入場者数や声出し応援の方法など、コロナ禍で課せられてきたさまざまな制限が撤廃された今シーズン。2ndレグでも壮観なコレオで浦和の選手たちを出迎え、試合が始まればスタジアム全体を揺るがす大歓声をとどろかせ続けた5万超の仲間たちへ、興梠も思わず目を細めている。
「(入りのバスのなかでは)ムービーを撮っている選手もいれば、ずっとながめている選手も、すごいなと驚いている選手もそれぞれいました。本当にサポーターのみなさんは素晴らしい雰囲気を作ってくれたと思います。僕はもう10年もいるので、あのような雰囲気には慣れているつもりですけど、初めて経験する若い選手たちも大勢いただろうし、満員近いあのスタジアムのなかで多少は緊張したかもしれない。でも、これが浦和です。浦和じゃなければありえない光景だったと思います」
オフにポーランド出身のマチェイ・スコルジャ監督へ指揮官が代わるなかで、昨シーズンから今シーズンにかけて、浦和のプライドを支え続けた仲間たちへ抱く感謝の思いもあった。
「たとえ負けたとしても、特に若い選手たちにとっては絶対に無駄なことじゃないと思っている。でも僕はもう年だし、年齢的にも最後のチャンス。なので、負けることは絶対に許されないと思っていた。その意味では2017年大会や2019年大会と比べて、気持ち的にちょっと違ったのかな、と」
負ければ2019年大会の自分のように、リベンジを期す思いが力になる。対照的に勝てばアジアの頂点に立った至福の喜びが自信につながり、その後の勢いを生み出す糧になる。スコルジャ監督のもとで新たな一歩を踏み出した直後だからこそ、何がなんでも後者の道を浦和に歩ませたかった。
必勝を期す決意は、興梠の背中を介して具現化された。相手ボールになれば「一の矢」と化して、ボールホルダーへプレッシャーをかける。スコルジャ監督が戦い方の土台として掲げるハイプレスを愚直に体現する姿に、同じ1986年生まれの盟友、GK西川周作は何度も胸を打たれたと明かす。