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Jリーグ 2年前

「無理はしたけど」酒井宏樹が浦和レッズで果たした重責。百戦錬磨の安定感とリスク管理【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by AFC

名実ともに「浦和の男」


 実際、酒井が右SBにいることによって1対1で抜かれないという絶対的な安心感がチーム全体にもたらされたのは事実。この強度と質は33歳になった今も衰えるどころか鋭さを増している。日本代表の森保一監督は半田陸ら若手SBの発掘に目を向けているが、酒井を越えるレベルの選手を見出すのはまだまだ簡単ではなさそうだ。

 そして迎えたタイムアップの笛。2007年、2017年に続く3度目アジア王者に輝いた瞬間、埼玉スタジアムには地鳴りのような大歓声が響き渡った。

 酒井も主将としての重責を果たした安堵感を覚えたのだろう。今回のACLは2011年の柏レイソルのJ1、2021年の浦和での天皇杯に続く自身3度目のタイトル。柏の優勝も同じ埼玉で決めたものだったが、今回はサポーターの声援を受けた中での戴冠だけに、喜びひとしおだったという。感情が高ぶったのか、試合直後のインタビューで目を赤くする一幕も見られた。

「目標にしていたものが現実になり、しかもMVPのおまけつきで、なんかちょっと怖さすらありますね。自分としては活躍できたトーナメントではなかったと思うし、まだまだやることが多くあった。優勝したからもらえたわけで、チームに感謝したいです」

 謙虚な物言いは30代半ばに差し掛かった今も変わらない。2021年に欧州挑戦に一区切りをつけ、Jリーグ復帰を決断した時には「レベルが下がる」「選手としての価値が低下する」などといったネガティブな声も受けたが、本人はブレることなく高みを目指し続けた。一番欲しかったACLタイトルに辿り着いたのも、こうした地道な歩みの成果なのだ。

 名実ともに「浦和の男」になった酒井宏樹。ACLファイナル2戦で彼が示した魂のプレーは後世まで記憶されるに違いない。

(取材・文:元川悦子)

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