後半の戦い方は反省の必要がある
前半だけで3-0のリードを奪ったアーセナルだったが、後半の戦い方は反省の必要があるだろう。
チェルシーは攻撃面においては完全に個人の能力に依存している。選手間の約束事は皆無に等しい。この試合のアーセナルの出来は決して良いとはいえず、不用意なボールロストもあった。チェルシーの選手はそれを奪うことができても、出し手と受け手の連係が曖昧すぎるためすぐにアーセナルの選手たちへボールを返してしまっていた。
選手個人のスタッツを見ると、ラヒーム・スターリングのパス成功率はわずか58%。スタメン出場したピエール=エメリク・オーバメヤンはパス成功率こそ100%だったが、本数はたったの6本。そのうちの4本がキックオフのものであり、オープンプレーで絡む機会はほぼなかった。
カウンターの精度も低く、62分にアーセナルのブカヨ・サカが相手ゴール前で足を滑らせたことでチェルシーの攻撃がスタート。このとき攻めるチェルシーの選手が4人、守るアーセナルの選手が2人という数的優位な状況だったのにも関わらず、ゴールはおろかシュートにも持ち込むことができなかった。
このチェルシーに対してアーセナルは気の緩みから失点を喫する。それが65分の場面、ボールを持っているマテオ・コバチッチに対してガブリエウ・ジェズスとウーデゴールがプレッシャーにいかなかったことで、クロアチア代表MFは完全にフリーの状況でディフェンスラインの背後へとボールを送った。
そしてそのボールに反応したノニ・マドゥエケに対して、左SBのオレクサンドル・ジンチェンコが全く反応をしないという怠惰極まりない守備を行い、失点を献上したのだ。
確かにこの場面では3点のリードがあり、アーセナルからすると余裕の展開だったが、第30節リバプール戦、第31節ウェストハム戦と2試合続けて2点差を追いつかれたことを忘れたかのようなプレーだった。
正直に言ってこの試合の出来は参考にならない。対戦相手の状況、そして気の緩みから生まれた失点を見る限り、まだアーセナルがベストの状態に戻ったとは言い難い。仮に最高の状態だったのであれば、後半開始直後の決定機も決めきれたはずだ。彼らがベストの状態かどうかは今週末にセント・ジェームズ・パークで行われるニューカッスル戦で明らかとなるだろう。
(文:安洋一郎)