チームに生まれた健全な競争
健全な競争が生まれたこともポジティブな要素。神戸戦から関川郁万が先発入りし、新潟戦からは名古、仲間、垣田もスタメンに抜擢されている。「年齢や経験に関係なく調子のいい選手を使う」という方向性が沈滞したムードを払拭させている。
特に常勝軍団復活請負人として今季呼び戻された昌子を外したことは、チーム内外にインパクトが大きかった。
「源君はスタメンを外れても練習からチームを締める声掛けをしてくれたりしている。自分だけの世界に入らずに、しっかり周りを見て、気づいたことを言ってくれる。それでチームがよりまとまっている印象がある」と樋口も強調する。影響力の大きい人間がそういう立ち振る舞いをしていれば、自ずと「自分たちもやらないといけない」という意識は高まってくるはず。そのムードが大事なのだ。
「今、出ている選手はシーズン最初に出ていなかった人が大半。腐らずどんどん下からやってきたことで、スタメンで出ていた選手を追い越すことができたし、結果も残せている。出てない選手は出るために必死にやらなきゃいけないし、出ている選手はより必死にならなきゃいけない。そういうサイクルができつつある」と植田も神妙な面持ちで言う。
チーム内にバチバチした空気が漂い、全員が要求をぶつけ合うような厳しい集団になれれば、鹿島はもっと上に行けるだろう。前向きな可能性を感じさせた今回の大勝をどう先につなげていくのか。ここで歩みを止めている時間はない。
(取材・文:元川悦子)