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明治安田生命J1リーグは9節を消化した。苦戦を強いられて軌道修正を図るチームもあれば、その修正をもとにスタイルを構築しているチームもある。苦戦する川崎フロンターレや上位に浮上した浦和レッズはどのような足跡をたどったのか。連載「Jの十字架」では“異端のアナリスト”庄司悟が「十字架」を用いて分析する。(文:庄司悟)
浦和レッズと川崎フロンターレは軌道修正中
J1第9節で注目したカードは、ヴィッセル神戸対横浜F・マリノス、川崎フロンターレ対浦和レッズの2試合だ。この4チームが「修正→構築→継続」のどの段階にいるのか、同4チームの各節ごとのポジションを十字架(縦軸=パス成功数×横軸=ボール支配率)で表すと、神戸、横浜FMは「構築中」、川崎、浦和は「修正中」にきっちり分かれた。
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図1と図2を見てほしい。まず、図1の神戸は第5節から9節まで十字の原点の近くをグルグルと周回していることがわかる。そして、図2の横浜FMも神戸と同じように、第5節から十字の原点にグッと近づき、9節ではほぼ原点に収束していることがわかる。まさにコンセプトを構築、早くもコンセプトの地固めに入りつつあるといったところだろう。
一方、川崎と浦和は軌道修正の真っ只中にある。浦和は序盤の左下ゾーンから徐々に右上ゾーンに位置を変えている。逆に、川崎は序盤の右上ゾーンから徐々に左下ゾーンに位置を変えつつある。15位と苦戦中の川崎は、2022年を振り返れば、ボール支配率が50%を切った6試合は4勝1分1敗だった。今年も第9節の浦和戦(41.1%)を含めて1勝1分と負けなしである。第9節までの十字架(図3)は平均値なので右上ゾーンにいるが、チームごとの足跡を辿ると、また違う見方ができる、というわけだ。
さて、十字架、特に縦軸=パス成功数×横軸=ボール支配率の十字架を出すと、最もよく聞かれるのが、「相関関係のあるグラフなんて当たり前だ。意味がない」という声だ。そのような読者は二次元ではなく、三次元の十字架であることを知らない。チーム名の前に順位という3つ目のパラメーターがついている。領域は当たり前なのに、順位は当たり前ではない……。これこそが、あえて「当たり前の十字架」を出し続ける理由にほかならない。
(文:庄司悟)
庄司悟(しょうじ・さとる)
1952年1月20日生まれ、東京都出身。1974年の西ドイツ・ワールドカップを現地で観戦し1975年に渡独。ケルン体育大学サッカー専門科を経て、ドイツのデータ配信会社『IMPIRE』(現『Sportec Solutions』。ブンデスリーガの公式データ、VARを担当)と提携し、ゴールラインテクノロジー、トラッキングシステム、GPSをもとに分析活動を開始。著書に『サッカーは「システム」では勝てない データがもたらす新戦略時代』(ベスト新書)、『現代フットボールの主旋律 ピッチ上のカオスを「一枚の絵」で表す』(カンゼン)。
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