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“約束事”はあるか?ブライトンの再現性とチェルシーの依存。明確だった両者の差【分析コラム】

シリーズ:分析コラム text by 安洋一郎 photo by Getty Images

ブライトンの得点シーンに見る戦術的な差



 まずは1点目の場面を振り返る。左サイドからの三笘からのパスはエンソ・フェルナンデスがカットをするも、ブノワ・バディアシルのクリアがアレクシス・マクアリスターに引っ掛かる。ここから縦パスが入り、最後はソリー・マーチのクロスをダニー・ウェルベックが頭で合わせた。

 続いて2点目の場面。ジョアン・フェリックスが自陣からドリブルで前進しようとしたところをブライトンの選手3人が囲んでボールを奪取。そこからブライトンが攻撃に転じると、一度はリース・ジェームズがパスをカットするが、再びアウェイチームがボールを回収する。そしてフリーでボールを受けたフリオ・エンシソが豪快なミドルシュートを放ち、勝ち越しゴールを決めた。

 この両得点に共通しているのが、チェルシーの自陣でのボールロストだ。ボールを持ってから、どのように相手陣内に攻め込めばいいのかという戦術がないため、個人がボールを持ちすぎたり、味方選手との意図が合わなかったり、という現象が発生する。

 対するブライトンはボールを失ってからの即時奪還を徹底していた。それが特に顕著だったのが2得点目の場面であり、フェリックスに対して3人がかりでボールを奪いに行っている。

 このミスマッチがブライトン優勢に働いた。本来であればボールを多く保持したチームの方が、タックル数が増えにくい。相手がボールを持っていなければ、そもそもタックルができないためだ。

 しかし、この一戦ではボール保持率が少なかったチェルシーが18回のタックルだったのに対し、よりボールを支配したブライトンが24回のタックルを成功させている。ボールを失った直後の切り替えの部分での差がスタッツにはっきりと出ている。

 ひいては両チームの完成度の差は明らかで、ブライトンは勝つべくしてチェルシーに勝ったのだ。クラブ史上初のスタンフォード・ブリッジでの勝利は必然的だったと言える。

(文:安洋一郎)

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