なぜ? 謎だった久保建英の交代
1点ビハインドで前半を終えたイマノル・アルグアシル監督は後半、それまでの4-3-1-2から4-3-3に変更。アンデル・バレネチェアを左WGに入れ、オヤルサバルを中央、久保を右WGに配置している。
この采配はうまくいっていた。バレネチェアが入ったことで左でも高い位置で幅をとることができ、攻撃に厚みが増した。同選手自身も良いゲームへの入りをみせており、後半立ち上がりからチャンスに絡んでいた。
55分には、左サイドのバレネチェアからシルバにパスが繋がり、リターンをバレネチェアがシュート。そしてこのこぼれ球を久保がシュートと、GKウナイ・シモンを脅かしている。ソシエダに流れがきていたのは明らかだった。
しかし、その矢先のことである。61分にアルグアシル監督は、オヤルサバルと久保を下げ、モハメド=アリ・ショーとアレクサンダー・セルロートの2人を投入したのである。
贔屓目なしに、久保の交代には疑問が残った。流れがきているなか、前線にフレッシュな選手を入れたいことは理解できたが、ほぼ消えていたオヤルサバルはまだしも、チャンスに絡み始めていた久保をエースと同時に下げる必要はあったのだろうか。確かに久保はベルチチェとの1対1で苦労していたが、周囲との連動という意味ではまずまずの働きをみせていた。また、久保はFWとMFの役割を兼任できる数少ない選手の1人であり、チャンスメーカーの負担をシルバ1人にかけないことを考えても、もう少し引っ張りたいピースだった。
結果論にはなるかもしれないが、この交代策は裏目に出ており、アリ・ショーとセルロートは沈黙。きていた流れを失ったソシエダは70分に追加点を許し、この試合の勝敗をほぼ決定的なものとしてしまった。
60分の交代はアルグアシル監督の常套手段と言えるもので、これまで早めの交代で相手に流れを明け渡してしまうことは多々あった。その反省を生かしきれず、この重要なダービーマッチを落としてしまったのは残念としかいいようがない。
(文:小澤祐作)