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FIFAワールドカップカタール閉幕から3ヶ月半が経ち、明治安田生命Jリーグ開幕から2ヵ月近くが経過した。ドイツ代表、スペイン代表を破った日本代表の戦いは、Jリーグにどのような影響を与えているのか。新連載「Jの十字架」では“異端のアナリスト”庄司悟が「十字架」を用いて各クラブのスタイルを暴いていく。(文:庄司悟)
試合結果を左右する土俵という焦点
まずは図1を見てもらいたい。図1はJ1第6節までの「Jの十字架」(パス成功数=縦軸×ボール支配率=横軸)をベースに、J1第7節の対戦カードをそれぞれ線で結んだものだ。全9試合中、実に6試合がほぼ同じ土俵にいる似たもの同士の対戦だったことがわかる。同じ土俵で試合をするのか、別の土俵に引きずりこむのか、が焦点の一つだった。とりわけ注目したのは、横浜F・マリノス対横浜FCの横浜ダービーである。では、2局面(ボール保持とボール非保持)に特化した左下ゾーン組との対戦が続いていた横浜FCは、同じく攻→守・守→攻の切り替えを含めた4局面のサッカーを志向する右上ゾーン組の横浜FMにどのようなコンセプトで臨んだのだろうか。
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J1第7節の「Jの十字架」(図2)を見ればわかるように、お互い位置こそ十字に寄っているものの、横浜FMと横浜FCの距離は相変わらず近い。そう、ともにこれまでのコンセプトを貫き、がっぷり四つで組み合ったことがわかる。しかし、久々にお互いの良さを真正面からぶつけ合える状況だったにもかかわらず、横浜FCは0対5と大敗を喫してしまった。元横浜FMのジョン・ハッチンソンをヘッドコーチに招聘したように、横浜FCのやりたいサッカーは確かに伝わってくる。ただ、“兄貴分”横浜FMに言わせれば、「がっぷり四つで挑むなんて、なんておこがましいのか」といったところだろう。
横浜ダービー同様に、同じ土俵同士の対戦だったガンバ大阪対川崎フロンターレ、セレッソ大阪対北海道コンサドーレ札幌、柏レイソル対鹿島アントラーズは、G大阪が右上から左上、札幌が右上から左下に土俵を移動し、見事に勝点3を上乗せした。一方で柏は土俵(左下)を変えずに、鹿島を右上の土俵にまんまと追いやり、待望の初勝利を挙げている。ホームとアウェーでそれぞれ戦い方が変わることを差し引いたとしても、やはり一枚の絵(十字架)で見ると、各チーム、各監督の志向が全体的にじんわりと浮かび上がってくるというものだ。
最後にアクチュアルプレーイングタイム(正味時間)についても触れておきたい。4局面同士の試合となった横浜ダービーの正味時間は60分08秒、そして2局面同士の試合となったアビスパ福岡対京都サンガF.C.戦の正味時間は39分23秒と発表されている。同じ土俵同士の戦いでも約20分もの差があった。この正味時間からも、それぞれの志向は大いに伝わってくる。
(文:庄司悟)
庄司悟(しょうじ・さとる)
1952年1月20日生まれ、東京都出身。1974年の西ドイツ・ワールドカップを現地で観戦し1975年に渡独。ケルン体育大学サッカー専門科を経て、ドイツのデータ配信会社『IMPIRE』(現『Sportec Solutions』。ブンデスリーガの公式データ、VARを担当)と提携し、ゴールラインテクノロジー、トラッキングシステム、GPSをもとに分析活動を開始。著書に『サッカーは「システム」では勝てない データがもたらす新戦略時代』(ベスト新書)、『現代フットボールの主旋律 ピッチ上のカオスを「一枚の絵」で表す』(カンゼン)。