疑問の残るアルテタ監督の采配
先述の通り、前半終盤の得点で目を覚ましたリバプールに対し、アーセナルは後半、耐える時間を長く強いられた。そんな中でミケル・アルテタ監督が最初に動いたのは、80分とかなり遅かった。
この試合に限らず、アルテタ監督は交代カードを切るのが決して早くはない。また、前半の出来を考えれば、強敵に対し動きにくかったことも多少は理解できる。しかし、交代カードの“切り方”については、多くの疑問が残った。
まず、マルティン・ウーデゴールを下げ、ヤクブ・キヴィオルを入れたことは正しかったのか。後ろに枚数を増やしたいことは理解できたが、ウーデゴールは前線からのプレスでかなり効いていた選手の1人であったため、下げるには惜しかった。案の定、ウーデゴールを下げ、5バック化した後のアーセナルは前線のプレスが必然的に弱くなり、自陣深くにおける対応を余儀なくされている。
そしてもう1つ、キヴィオルを入れて守備固めに入ったなら、なぜオレクサンドル・ジンチェンコを87分まで残したのか。同選手は攻撃面の貢献こそ素晴らしいが、守備面、とくに構えた守備には不安を残しているため、展開的には、もはや必要とは言えないピースだった。結果論にはなってしまうが、フィルミーノの同点弾はジンチェンコがトレント・アレクサンダー=アーノルドに抜き去られたところから生まれている。もっと早くキーラン・ティアニーを入れていれば、ブラジル人FWのゴールはなかったかもしれない。
チアゴ・アルカンタラ、フィルミーノと交代選手が躍動したリバプールに対し、アーセナルは交代策で流れを取り戻すことができなかった。ここまでチームの完成度を高めてきたアルテタ監督は素晴らしいが、この日の采配に関しては少なからずミスがあったと言わざるを得ないだろう。