完全復活を印象づけたエース
これだけの明確な弱点をアーセナルが逃すはずはなかった。実際にこの試合の得点シーンを振り返ると、エイリングは4失点のうち3失点に関与している。
1失点目の場面ではジェズスにペナルティーエリア内で不用意なファウルを与えてPK献上。この獲得したPKをブラジル代表FWは自ら蹴り、復帰後初ゴールを記録した。
そして2失点目の場面では、ジェズスとジャカが中盤とCBのマークを自らに集中させ、右WGのニョントが守備をサボったことも相まって、マルティネッリとエイリングの1対1の状況が生まれた。この局面となればアーセナルが圧倒的に優位となる。マルティネッリはあっさりとエイリングをかわしてクロスを逆サイドに送ると、最後は右SBのベン・ホワイトが詰めて得点を奪った。
4失点目の場面では、ジャカのマークに付くことができず、ノープレッシャーでヘディングシュートを許してしまった。
得点シーン以外にもジェズスが左サイドに流れて味方選手からのロングボールを引き出し、攻撃の起点を作るなど、アーセナルは相手の弱点を徹底的に突いた。その中で生まれたジェズスのゴールというのは今後のシーズンを戦い抜く中で大きな意味を持つ。
というのも、ジェズスは開幕から公式戦12試合で5得点4アシストと“新エース“に相応しい活躍をみせるも、10月1日のトッテナム戦を最後に得点が奪えず。この試合の先制点を決めるまで公式戦907分間もゴールから遠ざかっていた。この試合でようやくノーゴールの呪縛から解かれた男は、55分にオープンプレーからも得点を奪い、完全復活を印象づけた。
プレミアリーグも残り9試合。優勝に向けてラストスパートをかけたい場面で頼もしい男が帰って来た。
(文:安洋一郎)