サッカー日本代表の久保建英とは別人
ソシエダで久保が輝ける理由の1つは、シルバが常に久保を見続けてくれることだろう。シルバが久保を信頼しているからこそ、あのようなパスが出せる。その信頼は、前半に何本か決定機を外したくらいでは揺るがなかった。最も優れたパサーが常に久保を見てくれているという事実は、久保がアタッカーとしての信頼を掴んでいるという証でもある。そして、シルバがパスを出し続けたからこそ久保にゴールが生まれた。
出し手がシルバでなければ久保に合わせるパスは出せなかったかもしれないし、受け手が久保でなければシルバが出しそうなスペースに走り込まなかったかもしれない。両者には目に見えない阿吽の呼吸があった。久保がどうプレーすべきか、久保をどこで起用すべきかという次元ではなく、両者が揃ってはじめて成立する特別な関係が2人の間にはある。
ソシエダでの久保と日本代表での久保が別人なのは至極当たり前のことだ。日本代表にシルバはいないし、ソシエダに三笘薫はいない。シルバでさえハードワークが課せられている中で、もちろん久保もチームのピースとしてスペシャリティーを発揮してチームに貢献する。久保が活きるにはどうすればいいかという命題はナンセンスで、すべてはチームが勝つためにメンバーが存在している。
ただ、事実に変わりはない。
加入時は控えに回る可能性が高いと言われながらシルバと共存してレギュラーの座を掴み、エースのオヤルサバルが復帰した直後こそ控えに回ったが、またしても結果で実力を証明した。この日、勝利から遠ざかっていたソシエダに勝ち点3をもたらしたのは紛れもなく久保である。
ソシエダはこの勝利により、UEFAチャンピオンズリーグ出場権獲得にまた一歩近づいた。先発復帰にゴールという明確な回答を出した久保は、ソシエダにとって重要な存在であることを改めて示している。
(文:加藤健一)