西村拓真が取り組んだプレースタイルの改善
こうして前半は一進一退の攻防が続き、スコアレスで折り返すことになった。
「難しいゲームになることは最初から分かっていた。その中で何ができるかを考えながらやっていました」と言うトリコロールの背番号30が意識したのは「あえて動きすぎないこと」だった。
これまでの西村は、14.38kmを走った2月25日の浦和戦に象徴される通り、圧倒的な走行距離を誇っていた。が、あまりにも走りすぎるあまり、味方のスペースを消したり、自分自身もここ一番でパワーを出し切れなかったり、フィニッシュの精度を欠くようなシーンがあったようだ。それをコーチングスタッフから指摘され、改善の必要性に気付いたという。
「映像をもらったんですけど、無駄な動きが多いことが分かった。力の使いどころや強度はもっと伸ばせる部分があるし、走りの質も上げられる。相手に怖さを与えないと意味がないんで」と本人も語る。その結果、この日の走行距離は11キロ台に低下したが、本人の目指す「メリハリ」の一歩にはなったはずだ。
確かに、緩急をつけた走りができるようになれば、ゴール前への入ってくる鋭さや迫力も増し、得点数も伸びてくるだろう。20日から始まる代表活動で、鎌田大地や久保建英といったテクニカルなタイプのトップ下を競うことを考えると、オフ・ザ・ボールの精度を上げていくことは必須。そういった異質な選手が1人いることによって、代表の攻撃バリエーションも広がる。西村は「新生・森保ジャパンの新たなエッセンス」として生き残りを図る布石を打ったのである。