スティルがもたらしたスタッド・ランスの変化
「前よりも少しだけ自信が増して、少しだけ雰囲気も良くなって、少しだけポジティブなエネルギーが生まれた、ってところかな。僕はただみんなにできる限り楽しんでもらいたい、という思いでやっている。みんなが楽しんでくれたら自分もハッピーになれるし、結果的にみんながハッピーになる。選手たちは来る日も来る日も、懸命に走り、努力を重ねている。だから(今の好調は)そんな彼らのためにも嬉しいんだ」
具体的に変わった点として特筆すべきは、失点数が激減したことだろう。10日にランスのクラブハウスで行われた会見に登壇した伊東も、最近の好調の要因を聞かれて「守備が安定したこと、退場者が減ったこと、攻撃の連係がよくなったこと」の3点を挙げていた。
27節を終えた時点で、ランスはリーグで3番目に少ない26失点なのだが、スティルが指揮をとる前の10戦ですでに19失点。それ以降、11節から現在までで7失点というのは、リーグで最少だ。ガルシア監督は3バックを多用していたが、スティル監督は2戦目から4バックに変えると、以来4人体制に固定している。
かといって、守備重視のチームになったわけではまったくない。結果を見ると、0-0、1-1という手堅いスコアも並ぶが、ガンガン前に仕掛けていく攻め気旺盛なチームで、実際彼らの試合は見ていてとても面白い。前監督のもとではボランチだったMFマルシャル・ムネツィのように、より攻撃に絡む役割を与えられて、監督交代後は4得点2アシストと、見違えるように躍動している選手もいる。
さらにメンタル面の効果か、粘り強い戦いができるようになった。
12節のオセール戦は、1-1のこう着状態から、87分に伊東の決勝ゴールで2-1のサヨナラ勝ち。20節の、パルク・デ・プランスでのパリ・サンジェルマン(PSG)戦も、0-1で黒星かと思ったアディショナルタイムにアーセナルからレンタル中のフォラリン・バログンが1点を返して勝ち点1をもぎとった。そして次のロリアン戦は、0-2のビハインドから、後半4点をとっての大逆転勝利。さらには26節のアジャクシオ戦も「このまま0-0で、なんとか無敗はキープできたか…」と思った瞬間、やはりアディショナルタイムに、伊東の絶妙なバックパスから途中出場のイェンス・カユステが会心のボレーをぶちこみ、勝ち点3を手に入れた。
リヨン戦やトロワ戦など、「あと少しで勝てたのに最後の最後に失点して勝ち点3を逃す」というまったく逆の展開が目立ったシーズン前半が嘘のようだ。
勝利が次の勝利を生み、自信がさらなる自信につながる。いまのスタッド・ランスは、そんな良いループの中にいる。